月別アーカイブ: 2008年8月

大津市で建て方


大津市の現場で、水曜日から建て方が始まりました。

水曜日は土台を敷き、木曜日に1階の柱を立て、金曜日に残りを一気に組んだようです。

僕は水曜日の夕方、土台を敷き終わったときに見に行ってきました。

土台敷き1


 


 


 


 


 


 


 




↑ 土台の一部。手描きの墨や仕口など手刻みの仕事を見ていると、
  大工さんの気持ちが伝わってくるようです


土台敷き2


 


 


 


 


 


 



↑ 土台と柱の仕口部分拡大写真。
  土台の側面に小さく穿かれている四角い穴は、柱と土台を緊結する
  込み栓を通すための穴です



そして昨日、僕は現場にいけなかったのですが、梓工務店の監督さんが作業中の写真(↓)を送ってくれましたので紹介します。
(Nさん、ありがとうございました)

大津建て方


 


 


 


 



昨日(金曜日)は雨が降っていて心配だったのですが、事故も怪我もなく、無事に完了したようです。

日曜日には上棟式を行います。

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幼稚園の水場

遊び場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日は、朝から京都・滋賀を回っていました。

上の写真は京都市内の幼稚園さんで、この夏休み中に新たに設けた水場です。
後ろにある木の小屋は以前からあったものですが、ここで女の子たちがままごとをして遊ぶ際に使えるようにと、園長先生から依頼を受けて水栓と小さなシンクを設置しました。

外部なので耐久性を考えて業務用のステンレスシンクを母体にし、その高さを子供用に低く切り縮めた上で、外側には杉板の赤身の部分を張って仕上げています。

今週の火曜日(8/26)から園児が登園し始めたそうですが、園長先生のお話によると、夏休み前には無かった遊び場が増えたのを子供たちは目ざとく発見し、喜んで遊んでくれたそうです。

そういう声を聞くととてもうれしくなりますね。
お役に立てて幸いです。

 

 

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明日から建て方です

刻み

 

 

 

 

 

 

 

先週の初めに、大津市の梓工務店さんへ行ってきました。
(記事のアップが遅くなってすみません。
 昨日ご報告したとおり、静岡へ行きっぱなしだったもので・・・)

大津市内で明日から建て方を始める、Tさんのお宅の構造材刻み作業の進捗状況を確認したり、細部の打合せをしたりするためです。

構造材の緊結にはボルトなどの金物を使わないので、構造材は全て手刻みで込栓(こみせん)などで縫い合わせていく在来工法です。
(手刻み+栓引きですが、伝統構法ではありません)



この梓工務店の伊東社長が先日話してくれたのですが、この家の構造材の1坪当たりの木材体積は、現代の平均的な一般住宅の2倍あるんだそうです。
( ↑ 自分ではいちいち計算していないので、全く意識していませんでしたが・・・)

戦前の一般住宅並みだそうですが、実はさらにすごい話が(↓)。



現在梓工務店さんが信楽で建築中の物件は、何と1坪あたり4倍の木材を使っているそうな。
(すごい・・・)。

木をたくさん使うと、家の雰囲気もどっしりしたものに変わってきます。
今週末は建て方~上棟式を行うので、また現場に何回か足を運ぶことになります。
クライアントのTさんもとても楽しみにされている様子で、ご主人は建て方作業を見るために仕事を休んで(半休?)駆けつける予定だとか。
クライアントの方が現場を楽しみにしてくださっているというのは、とってもうれしいことですね。
職人さんも張り合いが出るでしょうし、頻繁に現場にいくということはいい家づくりのための第1歩です。



先述したとおりこの現場は構造材の緊結に金物を使っていないので、この機会に構造見学会をやって皆さんに参考にしていただこうと思っていたのですが、ちょっとスケジュールの都合がつかないかもしれません。

もし開催するとしたら9/7(日)あたりの予定ですが、その際には改めてご連絡します。

 

 

 

 

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静岡のストックヤードへ木材を搬入しました

ストックヤード

先週末に3日間、静岡へ行っていました。

昨秋伐採→今年の6月~7月にかけて製材した木材を製材所からストックヤードに搬入するためです。
全部で4トントラック×6台分の量になり、ストックヤードもいっぱいになってしまいました。

あいにく最終日(土)はしとしと雨が降って、作業が終わるころにはご覧のような状態です。
もともとここは砂地の非常に水はけのよい土地なのですが、フォークリフトで何度も場内を行き来するうちに、わだちの部分がぬかるんでしまいました。

次回は9月中旬に再度このストックヤードに行って屋根をかける予定ですが、3週間程の間は木材を雨に打たせてあく(渋)を抜きます。

今回、ご協力いただいた静岡のみなさん(↓)、どうもありがとうございました。
(杉山製剤所、こばやし柳太郎建築、山田林業、鈴木林業のみなさん)

おかげさまで無事搬入が完了して一安心です。

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建築家に設計を依頼するメリットとは?

うちが設計を行った現場での、ここ数ヶ月の間に起こった実際の話。

うちの事務所で作成した詳細な図面に基づいて見積を依頼したところ、

【ある住宅の新築現場】
A社の見積・・・3000万円
B社の見積・・・2500万円
うちの設計報酬・・・325万円

【ある施設の家具工事現場】
C社の見積・・・1000万円
D社の見積・・・800万円
うちの設計報酬・・・15万円

ということがありました。



建築家に設計を依頼することの大きなメリットの1つに、
『同じ条件での価格比較ができる』
というものがあります。

家を建てる前に
「どの工務店(または大工さん)に頼もうか・・・」
と迷って数軒の会社に相談を持ちかけると、各社それぞれに簡単な図面(平面図)を描いて、それに基づいた概算見積を作ってくれます。



でもこの見積で比較はできません。

なぜならこの図面は3社に依頼したとしたら
「3社3様の図面に基づいて作成した」
見積書であって、しかも
「完全にあなたの希望を反映したものではない」
からです。



通常、建築に取り掛かる前の設計作業というのは、最低でも約3ヶ月(うちでは標準的に6ヶ月)くらいはかかります。

実はこの数ヶ月という期間は【非ッ常~に重要】なんですが、わりと軽視される傾向が強いです。

でもこの設計期間にきちんと手間と時間をかけておくと、隅々まで非常に満足度の高い建物を構築することができ、着工後の追加・変更工事見積に悩まされるリスクも極端に少なくなります。



そして最も大きなメリットが、
【(隅々まであなたの要望に沿って完成した設計図に基づいて)全く同じ条件で価格の比較ができる】
というものです。

実際、2~3千万円の住宅工事であっても、工事の見積に数百万円くらいの価格差が発生することはよくあります。
そうすると、建築家の設計費用くらい元が取れてしまう、ということも実際あるのです。



ここで勘違いされることがよくあるのですが、僕は過剰な価格競争を促しているのではありません。

ちょっと考えてみていただきたいのですが、完全に1社だけからしか見積書が出てこないとすると、
「もしかして、他の工務店に頼んでいたらもっと安くできたのでは・・・?」
とか
「この価格は適正な価格なんだろうか・・・」
という疑問が沸いてくるのは当然だと思います。

でも、そう思ったって比較はできませんよね?
ここで得られるあなたのメリットは、
「価格への納得度・安心感」
です。



「もしA社ではなくB社に頼んでいたら、おそらくあと20%くらい高かっただろう」
とか
「もしC社に頼んでいたら、もっと安かったかもしれないけれど、仕事がきれいに仕上がらなかったかもしれないなぁ」
などというように、自分が支払った費用に対する対価に納得できるかどうか?というのはとても重要だと思いませんか?



僕は必ずしも工事費用が安いことがいいことだと思っているわけではありません。

たとえば世の中には、ほぼ同じ機能・容量のかばんでも、
〇 1,000円のもの
〇 10,000円のもの
〇 100,000円のもの
などいろんなものがあって、その中からみなさん取捨選択しているわけですよね?

100,000円のかばんが必ずしもボッタクリなわけではなく、きちんとした価値があるから納得してそのかばんを買ったりするわけです。

あるいはまた
「あの店で買えば、革のなめし方に間違いが無くて、工場周囲の環境汚染や材料の仕入れ方などにもきちんと配慮してくれている安全な商品が手に入るから、多少高くてもあそこで買おう」
といった理由で買う場合もあるでしょう。

一番重要なのは、「安さ」ではなく「価格に対する納得」や「商品・サービスへの安心感」だと思うのです。

そういった意味でも比較は重要です。
その際に活きてくるのが、建築の場合には【半年かけてじっくり作り上げる設計図】なんです。

今日からお盆休みも明けて、また通常の生活に戻られる方が多いと思います。
まだまだ暑いですから、体調管理には充分ご注意くださいね。



 

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木製洗面カウンター

洗面カウンター1

 

 

 

 

 

 

 

先月静岡へ行ったときに、1本太い原木を製材してきました。

この木は、昨年の11月にクライアントのNさんが京都から静岡まで伐採を見に来て下さった時に伐った一番太い木です。

この木は一番根元で80㎝くらいの太さがあったので、この太い部分を使って洗面所のカウンターを1枚板で作りましょう!とご提案しました。
上の写真は静岡市内の杉山製材所の専務さんですが、木の太さがよく判るでしょう?


洗面カウンター2

 

 

 

 

 

 

 

製材機に載せて製材しているところです。

洗面カウンター3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出来上がった板がこちら。
板の厚みは9㎝で、長さ5mにわたって節がほとんど無いおとなし~い木でした。

上の画像には、どのようにこの板を使うかを点線で描き込んであります。
画像をクリックして拡大表示していただければお分かりになると思います。



「この木なら、和室の天井板が採れたねぇ~」
と製材してくださった杉山さんがおっしゃっていました。

もしNさんのお宅に和室を作ることになっていれば、この木は天井板になっていたかもしれません。
(でもNさんのお宅には和室がないので・・・)



先日、打合せのためにNさんがうちの事務所にきてくださった折、この時の製材の様子をプロジェクターで大きく投影して見ていただきました。

うちが静岡で伐採する木には、全て伐採時に個別ナンバーを打っていますから
「(目の前で伐採された)あの時の木だ」
と写真で確認していただくのもとても容易です。

Nさんも喜んでくださっていますが、きっとこの木もこういう使い方をしてもらって喜んでいることでしょう。

あなたもこんな家づくり、やってみませんか?
とっても楽しいですよ。

 

 

 

 

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新月伐採(材)の誤解

あなたは「新月伐採」という言葉をご存知でしょうか?

この新月伐採の効能について誤解されていることが多いなぁ、と感じることがたびたびあります。

一般の方(←専門家以外という意味)ならいざ知らず、林業関係者や材木屋さんなどの木の専門家と話をしていてもそういうことがたびたびあるのです。
そこで、新月伐採についての基本的な事柄を簡単にお話してみたいと思います。



【Q1 新月期に伐ると、満月期に伐った木よりも木の中の水分が少ないの?】

これが一番多い誤解です。

よく言われているのが、
「月・地球・太陽の位置関係によって赤道付近に引力が偏り、木の中の水分が少なくなる」
という説明ですが、そんなことはありません。

満月期/新月期の木の中の水分に変化がないことは、いろいろな試験で実証されています。



【Q2 新月期に伐るといい木材ができるの?色艶も変わるの?】

新月期に伐った木材は割れにくい傾向があると言われていますが、絶対に割れないわけではありません。
普通に割れます。

新月期に伐ると、木の色艶が良くなるということもありません。
色艶は主に伐り旬(きりしゅん)という時期(※)を選んで伐ると、いいものが得られやすいようですが、新月期に伐ったからといって特別に色艶が良くなるわけではありません。
※伐り旬は一般的に10月下旬~1月ごろとされています



【Q3 木材は新月の日に伐ればいいの?新月なら1年中いつでもいいの?】

これまた違います。

新月伐採というのは新月の日に伐るわけではなく、下弦の月(下方向に弓なりになった三日月の状態)から新月の前日までの約1週間に伐ることをいいます。
この下弦の月~新月の前日の期間を【新月期】と読んでいます。

そして1年に新月は13回ありますが、そのうちの11月から2月にかけての新月期のみを選んで伐採するのが良いとされています。

 

新月期なら1年中いつでも良い、というわけではないのです。

さらに新月伐採で重要なのは、伐採時期だけではありません。
実は伐採時期と同様に、「伐採後に4ヶ月間葉枯らしすること」がとても重要です。
葉枯らしをしないと新月伐採の効果は得られません。



【Q4 新月伐採材は腐りにくいの?】

新月伐採材の最大の特徴は、「カビ・虫・腐りなどの害を受けにくい材になること」です。
新月期に伐られた後、木の中に残された養分(主にブドウ糖=でんぷん質)は葉枯らしすることで光合成によってゆっくりと消費されます。

ここが新月材の最大の謎なのですが、伐採時には満月期/新月期の材中に残存している養分にさほど大きな違いはないのにもかかわらず、約4ヶ月の葉枯らし期間を過ぎると、両者の違いが鮮明に出るのです。
(ヨウ素溶液反応などの実験により科学的に実証されています)

つまり、
〇 新月期に伐り→葉枯らしを行った木材中には、
  でんぷん質などの養分がほとんど残っていないのに対し、
● 満月期に伐り→葉枯らしを行った木材中には
  でんぷん質などの養分が残ってしまっているのです

でんぷん質=カビ・虫などの餌です。
よって満月期に伐った木材は害を受けやすいのに対し、新月材はこれらの害を非常に受けにくいということが言えます。

ここが新月材の最大の特徴です。



特別な薬品(防腐剤など)を使うことなく、エネルギーも浪費せずに、木の生命力をうまく利用して、腐りにくく虫害を受けにくい木材に仕上げる。
こういうスタイルは、今後多くの人に広く受け容れられていくだろうと思いませんか?

新月材のメカニズムが全て解明されるまでには、物理学の新しい理論の確立を待たねばならないらしく、あと2-3年かかるようです。

現在は否定的な見方をされる方が圧倒的大多数ですが(笑)、僕は直感的に正しいやり方だと感じています。

あなたはどう思われますか?

 

 

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吉野の原木

吉野 

奈良市内で数年後に建てるOさんのご自宅に使う木材の伐採がほぼ終わったと聞いて、奈良県の吉野に行ってきました。

吉野といえば、やはり何と言っても杉です。

わざと育ちにくいように杉を密植させて、木の成長を遅らせ、目の詰まった良材をつくるのが吉野独特の植林方法です。
ですから、木材が太くなるのには長い時間がかかりますが、出来上がった木材は肌理が細かく、とても美しいものになります。

そして吉野材は土壌のせいでしょうか、他の産地の杉では出ない、しっかりした強い赤色がもうひとつの特徴です。
数奇屋の世界では、この吉野杉の赤身の部分だけを使って採った材料を【赤杉】と呼んで大変好まれます。

ちょっと話がそれましたが、冒頭の写真はクライアントのOさんが樹齢120~130年の吉野杉にまたがっているものです。
ご夫婦でものすごくうれしそうな表情をされているいい写真が撮れたので、本当は拡大して見ていただけるようにしたかったのですが、やめておきます。

この木は大きくて、とても素直ないい木です。
製材したら、感動でうち震えるぐらいいい材料が採れるでしょう。
今から木目が脳裏に浮かびます。

林業家であるお父様が木材を提供してくださるおかげで、とても豊かな家ができそうです。

僕も静岡で林業家と一緒にいろんな取り組みをしていますが、吉野はまた少しやり方が違っています。

伐採時期、葉枯らし期間、出材方法、土壌と樹芯の発色など、いろんな事情から様々な違いがあり、実際に手を下している林業家のお父様からいろんな詳しいことをお聞きできて大変勉強になりました。

同行したうちの事務所のスタッフもいろんなことを学んだようです。
やはり木は原木の状態で見ないと、もう1つ深い理解ができませんね。

人間も育った地域や環境によって人格が形成されるように、木も全く同じです。

またほんの少しだけ木に近づけたような気がしますが、まだまだ奥が深いです。
(というか、深すぎます)

そこに木造のおもしろさがあるんですけどね。

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新月材の大黒柱を持っていきました

8/7(木)に、和歌山の友人・東さんが1年間預かってくださっていた杉の大黒柱4本と梁2本を2トントラックに積んで、静岡へ走りました。

この材料は2006年11月の新月期に伐採し、4ヶ月間葉枯らしした後に静岡で製材した材料です。
樹齢110年の1番玉から採った大黒柱は、長さ6.6m、太さは細いもので24cm×24cm、太いものだと30cm×30cmあります。

大黒柱1

 

大黒柱2

1年間、東さんの倉庫に置きっぱなし(東さん、ありがとうございました)だったので材料の面(つら)を久しぶりに見たのですが、おとなしくて素直ないい木です。
惚れ惚れ見ているとついつい柱の表面を撫でてしまいます(笑)。

ストックヤード

今回材料を持って行った場所は、静岡市葵区梅ヶ島にある土地です。
ここはこれから毎年継続的に行っていく予定の、静岡材のストックヤードとして使います。
まだ仮の整地しか終わっていませんが、今月の下旬にはもう少し丁寧にレベル調整をして、6月から製材に取り掛かっていた材料を搬入し、ここで自然乾燥します。

今月末、来月上旬と、まだあと2回くらいは静岡へ行かなくてはなりません。
気づけば、ほぼ毎月静岡へ行っているように思います。
先祖のお墓参りができてちょうどいいんですが(笑)。

馬

今回、大工さんに特注した馬(うま)。
この上に木材を約2m積み上げるので、通常の馬の2~3倍の強度が出るように考えて作りました(重くて荷降ろしが大変!)。

「なんでこんなごっつい馬が要るん?」
と大工さんに不思議がられました。
でもこれだけ頑丈に作っておけば絶対安心です。

一昨年から取り掛かっているこの静岡でのプロジェクトは、現在の建築木材業界の常識とは真逆のやり方で、どう考えても経済的には非効率なことばかりです。

でも、エンドユーザー(建築主)にとってはすごくメリットが大きくて、木材も本来の魅力が存分に活きるし、林業関係者も喜ぶシステムです。
(管理するうちの事務所はなかなか手間がかかって大変ですが、この材料を使っていただく予定のクライアントさんにはとても喜んでいただいています)

現在作っている新しいホームページでは、このシステムの全体像をきちんとわかりやすくご説明できるようにと思案中です。
公開は今月末ごろの予定。
どうぞお楽しみに。

 

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建物のコンセプト

建物を設計していく際には、【デザインコンセプト】というものがとても重要になります。
一般の方と建築家が家の構成を考える上で一番大きな違いは、この【デザインコンセプト】をどのように設定するか?ということだと思います。

最近は間取り作成ソフトなども廉価で販売されているので、建物内部の間取りを考えることだけなら、正直さほど難しくないでしょう。
でも、デザインコンセプトをどのように構築するか?ということは、割と難しいんです。

先日見学会を開催させていただいた、西宮市の現場のデザインコンセプトをどのように設定したか?についてお話ししてみようと思います。
「へぇ~、そんな風に考えるんだ・・・」
と参考にしてみてください。

 

外観

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



建物の設計をする際に、まず建築家が一番大切にするのは敷地の条件です。
この土地はご覧のように高台にへばりつくように建物が建っています。

ですから当然、眼下には見晴らしの良い風景が広がるわけで、それをまず最大限採り込むように、開口部やリビングの配置を考えます。

 

リビング南眺望

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



そこで上の写真のように、一番眺めのいい位置にリビングを配置した上で、眺望の開ける方向に開口部を設けるわけです。
本来は建物の角部分に壁があった方が構造的に良いので、このような開放的な構成にすることは少ないのですが、何と言ってもこの敷地の一番の魅力はこの眺望でしたから、「これを活かそう」と考えました。

 

リビング北眺望

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



そして反対の山側には、豊かな緑が広がっています。
これもとても特徴的なこの敷地の特性なので、「これを活かそう」ということになるわけです。

上の写真はリビングからの眺め。
下の写真はリビングに対面する形で配置されたキッチンの全景です。

キッチン北眺望

 

 

 

 

 



基本的にこの家を設計するに際しては、
「この環境・景観を邪魔しないような、透明な家」
が理想だと思いました。
ですから装飾的なデザイン要素は極力排し、建物の存在感を消して周囲の環境が浮かび上がってくるように・・・ということを基本コンセプトにしています。

 

で、この家は南側に市街地の眺望が開け、北側に山の緑が迫っています。
そうすると、風は普通山から谷へ吹き降ろしますから、南北に開口部をたくさん設ければとても風通しのいい家になり、さらに2層吹き抜けにすることで熱気は上へ上り、冷気が下へ降りてきます。
すると、夏涼しい家ができるわけで、本当にこの家は何もしなくても涼しいんです。

作った僕が言うのも何ですが、非常~にうらやましい家です。



建物を作る際には、一般の方は
「どんな間取りにしようかな~♪」
ということにまず心を奪われてしまうと思うのですが、その前にまず周囲の環境・条件を把握して、それを良くも悪くも活かすようにデザインコンセプトを構築することが一番大切です。

そしてデザインコンセプトが固まったら、それに沿って間取りを考える。
すると、本当の意味で世界に1軒しかない個性的な家ができるんです。

個性的というのは何も過剰なデザインを施すことではありません。
特徴を読み取って素直にそれを活かしてあげる。
それが一番大切なことです。



今日はこの家のお引越しでした。
Uさん、ご入居おめでとうございます。

 

 

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