月別アーカイブ: 2007年6月

何を大切にすべきか?

2つの不動産物件を探しています。

ひとつは昨秋新月伐採した木材の置き場所(ストックヤード)として使える土地。
もうひとつは事務所として使える木造の建物。

ストックヤードの方は、大阪府豊能郡能勢町にひとつ目ぼしい物件を紹介してもらったので、それがこちらの希望に沿うものかどうかを調査・検討中。
7月中には静岡から材木を運んでくるので、こちらは近いうちに決定しなければいけません。

来年度以降は、継手の無い、全て一本ものの木材のみで組み上げる木の家を作っていく計画を密かに進めています。
プレカットは基本的にはやめて、全て手刻みでの家作りにシフトしていくつもりです。
そのためには自社で木材をストックし、加工する場所が必要になってきます。

もうひとつの事務所物件探しは難しいです。

現在の事務所はマンションの1室を借りて使っているのですが、木造専門の建築家が鉄骨造のマンションで設計をしている、というのはどうも説得力がありませんよね?
(考えすぎか?)

事務所として使える木造の建物を探すだけならさほど難しいことではありませんが、僕は住居も事務所の近くにあることが外せない条件なのでなかなか難しいのです。

僕の父はサラリーマンだったのですが、いつも帰りが遅くて一緒にご飯を食べられないのが何となく嫌でした。
だから今は、ほとんど毎日、子供が晩御飯を食べる時間に一緒に食事を採るようにしています。
(だから勤務は19:00で終わりです。←設計事務所としては異例
 まぁその代わり、朝はメチャメチャ早いですが)

今は一棟のマンションの2室を借りて、1階を事務所に、2階を自宅にしているので、そういう面では非常に助かっています。

新しく事務所を探してもし自宅が離れると、それも今ほど簡単ではなくなるので、さてどうしたものか・・・と頭を悩ませるわけです。

うちの息子も来年は小学校に上がるので、途中で転校することを避けるためには真剣に住むところを考えないと・・・と思うのですが、自分自身なかなか「絶対ここに住みたい!」と思う街(場所)に出会えません。
自分自身、途中転校を経験してなかなかつらかったので、在学途中での転校はさせたくないなぁ・・・と。

企業としてはクライアントにとっての利便性を優先すべきですが、自分自身のライフスタイルを変えてまでそれを押し通すのは僕にとっては違うという思いが強く、判断が難しいところです。

なんだか今回の記事はホンマのヒトリゴトになってしまいました。
まぁそのうちにいい物件に巡り逢うでしょう。

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世界に、300年先も美しい風景を

知恵

先週の木曜日、京都市内で古家付土地の購入を検討されているクライアントから依頼を受けて、物件を観に行きました。

近隣は緑が豊かで静かな住宅地で、近くには琵琶湖からの疎水が流れており、小さな魚がゆらゆらと気持ちよさそうに流れに身をまかせていました。
(多分、うちの息子が見ると「あのお魚採りたい!」って絶対言うだろうな~)

今回のクライアントであるNさんからは、この古家をリフォームして使うつもりはないが、
1. 何か外して使える部材が無いかどうか
2. 敷地の前面道路が狭いので工事をしにくい土地のように思うのだが、
  その点について見解を聞かせて欲しい
と相談されました。

最初外観を見た印象からは、正直使えるものはないだろうなぁ・・・と諦めていましたが、中に入ってみると建具関係(障子・襖・舞良戸)に素直で品が良くて使いやすいものがたくさんありました。
和室の床框や玄関の靴脱ぎ石なども、上手に解体すれば使えそうないいものがありました。

でも、構造材にはあまりお金をかけた様子が見られなかったので、どうもこれらの建具はこの家を建てた当時(大正時代)どこかよそから貰い受けてきたのではないか?というような気もしました。
もしそうだとしたら、これこそ京間というモジュールのなせる業ですね。

こういう、モノを上手に再利用できるように考えて作るモノづくりの知恵はきちんと見直して継承していけるといいですね。

 

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古い?新しい?

2週間ほど前のことですが、仕事の打ち合わせが終わった後、京都市左京区にある曼朱院門跡へ行きました。
このあたり(北白川・修学院近辺)には詩仙堂や修学院離宮、白沙村荘などもあり、美しい建物がゴロゴロしています。

曼朱院門跡へ行ったのはすごく久しぶりだったので、どんな建物だったかすっかり忘れていましたが、やはり美しかった・・・。
今回は特に屋根を詳しく見てきました。

上の写真は小書院(こしょいん)の外観です。
杮(こけら)葺きの屋根で、華奢で繊細な雰囲気を出すために、勾配は3寸とゆるめでした。
起り(ムクリ)はついていません。
軒がちょうどいい感じに低く抑えられていて、とても繊細でした。

一方、下の写真は大書院(おおしょいん)の屋根です。
材料は同じ杮葺きですが、屋根勾配も5.5寸~6寸(推定)と小書院よりも勾配をきつくして、大らかな感じを出すために少し強めのムクリをつけています。

大徳寺高桐院(京都市北区)の書院もこれと似たような屋根ですが、僕はこんなやわらかい感じの屋根が大好きです。

曼朱院門跡は、桂離宮の造営と同時期に、同じ人が同じ材料を用いて作ったと言われていて、桂離宮と似たところが多々あるそうです。

最近仕事の関係で京都に行く機会が多く、少し時間が空くとすぐにお寺を観に行ったりするのですが、久しぶりにいろいろと実測して回りたくなりました。

名建築の実測は何よりも一番勉強になります。
建物をつくった棟梁の考えたことが、実測すると手に取るようにわかりますからね。
少しずつ、少しずつですが、もっともっと研鑽を積んで、みなさんにより美しい建物をご提供できるように頑張ります。

昨日の晩、西宮市内で竣工した建物のクライアントと現場で少し話をしたのですが、今回できた建物をみて

「変わった家ですよね。
何だか、古いんか新しいんかようわからんような家ですね」

と評されました。
そう言われると、どの家もそうかもしれません。

この記事の前半を読んでいただいてもお分かりのように、僕は日本の伝統的な建物のつくり方を強く意識しています。
僕の設計する建物は、手法やセオリーが伝統的なものに基づいていて(もちろんアレンジを加えていますが)、使う材料は現代的なものなのできっとそう言われるのでしょう。

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障子の引手

障子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



畳と同様、障子がある家は最近ぐっと少なくなりました。
僕は障子も畳も大好きなのでこの傾向は少し残念に感じていますが、家というのは住み手(=クライアント)のライフスタイルに合わせるべきなので、ある意味仕方ありません。
(もちろん、いつか自分の家を建てるときには絶対に和室をつくって障子を立てます)

最近の障子には利便性から引手が付いていますが、本来は障子に引手はつけない方がいいのです。
ただ、裏引手(←紙が貼ってある面につけておく引手のこと)は必要ですが。

つけない方が障子としての姿形も(引手があるときに比べて)ずっと美しく、そして引手の付いていない障子を開けるために人間が行う動作も美しくなります。
上の写真に写っているのはうちの事務所の障子ですが、もちろん引手は付けていません。

このことも(自分が設計する建物だとはいえ)僕はクライアントに強いることはしませんが、ご理解いただけそうな方にはさりげなくご提案するようにしています。
(すると、大体そういう方にはす~っと理解していただけます)
なぜなら、引手をつけない方が開け閉めの所作に多くの手間がかかり、より面倒だからです。
襖も引手が付いていますが、本来の開け方・閉め方をすると同じようにもう一手間かかります
(あなたはご存知ですか?
 お茶を習った経験のある方はおわかりだと思います。
 だから茶室の障子には引手が無いのです)



現代においてこういう考え方は万人に受けいれられるものではないので、別にどちらでもいいことかもしれないのですが、もし興味が沸いた方はご自身で調べてみてください。

日本の美しい文化の一つです。



ちなみに、茶室の障子は紙の貼り方も普通の障子とは違いますよ。
機会があったら注意して見ておいてください。
興味のある方は、その理由も調べてみると面白いと思います。

 

 

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7/7(土)に神戸市北区で構造見学会を開催します

下記の日程で、現在神戸市北区で建築中の家の構造見学会を開催します。

【開催日】 2007/07/07(土) ←七夕の日
【 時間 】  11:00~14:00

今回の見学会は、この現場の施工を引き受けてくださっている、大阪の輝建設株式会社さんとの共催です。

構造材には高知県梼原(ゆすはら)町産のFSC認証材を使っています。
とにかく何から何まで、杉、杉、杉・・・の家です(土台と大引のみ桧)。
野地板(屋根下地の板)も当然ムクの杉板を使いました。
写真のように垂木や母屋・桁などの小屋組材もやっぱり杉で化粧で見せます。
まだ張っていませんが、床板も吉野産の杉です。

この家はかなり変則的な作り方をしています。

他人に説明するときには、「総2階平屋建てみたいな家」と僕は言っていますが、2階には納戸以外の部屋がありません。
階段もありません(はしごのみ)。
基本的には平屋の形をしている、30坪(=60帖)ワンルームのような家です。

でも上記の写真のように、2層分吹き抜けの空間を大黒柱が貫いていて、室内からは小屋組みや野地板・垂木などが丸見えです。
(もちろん断熱材はその上にちゃんと入れてありますが・・・)

これで暖房は薪ストーブのみ、冷房なし(まぁ冷房は不要でしょう)、窓は全て木製建具という、何とも勇気のある素晴らしく割り切りのいい家です(笑)。

それもこれも、クライアントであるSさんご夫妻の生活スタイルや人生観を表現していった結果ですが、家というのは建築主の考え方が如実に現れるものです。

いろんなクライアントのみなさまと一緒に家作りをさせていただいていて、それは本当に強く感じます。
何せ、設計をしているのは僕であっても、毎回出来上がってくる家が全然ちがうんですからね。

構造見学会へのお申し込みは、こちら(※)よりお願いいたします。

※ 当方ホームページ問い合わせフォーム:別ウィンドウが開きます

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沙羅双樹の花

昨日は早朝から神戸市内で2軒回ってから京都へ行きました。
(このところ走り回ってばかりで、まともに事務所にいません・・・)
神戸市北区の現場で7/7(土)に構造見学会を開催する(※)のですが、その現場の様子を観て大工さんと打ち合わせをした後、中央区で申請を済ませて京都へ。
※ 近日中にお知らせしますが、参加ご希望の方はさとうまでメールを送って
  下されば現場の地図をお送りします。

昼から京都市内の現場で建物の引渡し業務に立ち会った後、妙心寺(京都市)内の塔中(たっちゅう)で庭を観ながらクライアントと少し話をしました。

この妙心寺の塔中は沙羅双樹の咲く今の時期だけ公開するそうです。
(塔中の名前は失念)
庭の中央には、数年前の空梅雨のために立ち枯れてしまった樹齢300年の立派な沙羅双樹が、伐採されずに立ち枯れた状態できれいに手入れされて残されていました。

僕も昨日初めて知ったのですが、沙羅双樹の花というのは、朝咲いてその日の夕方にはもう落ちてしまうそうです。
何日かに渡っていくつかのつぼみが花開くので、一年に1日しか見られないという訳ではないのですが、平家物語の有名なくだりや仏陀との関わりを連想して、無常というものを感じずにはいられませんでした。

沙羅双樹の花の写真は撮っていませんが、椿の花をひとまわり小さくしたような白い花でした。

昨日から入梅したせいでしとしと雨が降っていて、濡れそぼった石と苔がとても美しかったです。

濡石

(写真は拡大表示できます)

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(新月伐採→葉枯らし→)ついに製材しました

ブログ更新なかなかできずに申訳ありません。
現場も片付いて落ち着くと思ったのになかなか・・・です。

昨日、静岡に行ってきました。
昨秋11月末に新月伐採後、4ヶ月葉枯らし → 今春3月末に山から下ろしした杉の丸太をついに製材してきました。

いろいろと詳細にご報告したいことが山ほどあるのですが、今日は時間に追われているため簡単にしておきます、詳しくはまた改めて。

下に掲載した写真は、長さ9mの丸太から270mm(9寸)角の大黒柱を製材しているところです。
画像をクリックして拡大表示してみて頂ければ、美しい杢目の様子なども詳しく見ていただけると思います。

↑ 手前にいる女性と比べてみていただければ、
丸太の長さ(9m)が良くわかるでしょ?

節も無く、とても美しい杢が出ました。

年輪の詰み具合は最高です。
申し分ありません。
天然材ならいざ知らず、これでも植林材ですよ。

僕は奈良県吉野産の木材をよく使いますが、ほぼ同じレベルです。
静岡材の実力恐るべし、です。
これも育った山の環境がとても良いからなんですが・・・。

環境が良いというより、正確には厳しい、と言ったほうが正確ですね。
今回の木が植林されているのは、土地がやせていて北斜面で、とても木材が育ちにくい環境です。
その中で鍛え上げられて育つので、このような良材が採れるのです。

今回取れた製材品はこれから1年間天然乾燥させて、来年にはどこかの現場で使われます。

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竣工しました

1月から取り掛かっていた、西宮市内の現場が昨日ようやく竣工しました。
ようやくこれで一息つけそうです。
上の写真は2階のLDKの全景写真で、床板は信州産の唐松、構造材は宮崎の杉です。

今回の現場は、個人的にベストメンバー(各職方)が出揃った感があり、自分自身納得のいくものができました。
大工・建具の職人がとても良かったです。
(西田さん、塚本さん、ありがとうございました。
 もちろん他の職方の皆さんにも大変感謝しております)

現場が竣工したときにいつも思うのですが、僕のつくる建築は写真が撮りにくい・・・。
↑ これって、インターネットサイトを主力営業マンとしているうちのスタイルから考えると、極めて不利ですよね(笑)。

でも、うちに依頼してくださるクライアントの皆さんは、どうやら僕のつくる建築の美しさに惚れて来て下さるというわけではないようなのでいいのかな?
( ↑ 嬉しいような、ちょっとさびしいような・・・)

半年くらい前から、自分自身のデザインスタイルがほんの少しずつ変化してきています。
主として照明の手法が変わってきました。

建物をつくる際の基本的な方針には全く変化はありませんが、全体のデザインとしては、よりシンプルに、木材の美しさが前面に出るような控え目な方向へと向かっていますので、今後はより一層写真ではわかりにくいものになっていく恐れがあります(苦笑)。
見せない×見せない×見せない、という完全な引き算型建築です。

だからこそ木材が浮き出てくるのですが、いくら言葉で言っても無理ですね。
百聞は一見に如かずです。

今月は少しゆっくりします!
(ちょっと休ませてね。
 体が音を上げています)

そろそろ蛍を観に行かないと。
本も読みたいし、映画も観たい。

〇 現在ご依頼を頂いているクライアントの皆様
〇 ここ1ヶ月くらいの間に当方サイトからお問い合わせいただいていた皆様
来週あたりからぼちぼちご連絡を差し上げていきますのでお楽しみに。

ブログの更新、これからは通常通りのペースに戻していきます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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