月別アーカイブ: 2007年2月

完成見学会開催を開催します

昨年の夏に着工した、大阪府四条畷市内の現場

『木曽のみんなが作ってくれる大阪の家』

がいよいよ竣工します。
クライアントである T さんのご協力を得られたので、下記の日程で完成見学会を開催します。

【開催日時】 2007/4/8(日) 10:00~12:30
【開催場所】 大阪府四条畷市
【参加費用】 無料

当日は午後から引越し作業を開始するので、午前中のみの短い時間での開催になってしまいますが、ご都合のつく方はぜひお越しください。

現在外壁の吹付作業を行っており、近日中に外部足場も外されるので、そうしたら外観の写真も公開しますね。
どうぞお楽しみに。

木曽の大工が木曽の木(メインは木曽檜)を使って全て手で刻み、竹小舞を編んで荒壁をつけた、筋交いを用いない伝統構法で組んだ家です。
伝統構法での住宅建築を計画されている方には、実物を見られるいい機会だと思います。

見学会への参加お申込みはこちらからどうぞ

【お知らせ】
3/11(日)に伊丹市で民家のセミナーを行います。詳しくはこちら

 

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世界に、300年先も美しい風景を

施工者を選ぶ基準

2週間前に、神戸市北区で来月から着工を予定しているS邸の見積提出・プレゼンテーションがありました。
今回は2社が見積もりに参加していただき、最終的に大阪の輝建設さんに工事をお願いすることが決定しました。

今回の見積に際しては、両社ともに全く同じ条件で見積をお願いしました。
こちらで作成した詳細な設計図書を渡し、同じ期間内で見積を作成してもらうという条件です。

そして両社には、

「施工者決定においては、価格が最も重要な要素ではありますが、
 競争入札ではないので価格だけで決めることは絶対にしません。
 ですから、各社それぞれに自社の理念や活動内容、
 過去の実績などが伝わる資料を持参して、自由にアピールして下さい。
 表現方法や資料の形式等に関しては全く自由です。」

とあらかじめ伝えておき、各社1時間半のプレゼンテーションに臨んで頂きました。
持ち時間である1時間半の間に、企業としてのアピール、見積書の提出・説明を行っていただき、その場で僕が見積書を精査していろんな質問や確認を各社に対して行って回答を得て終了です。

両社の間には企業としての姿勢や活動の指針となる理念に大きな違いがあり、クライアントであるSさんもそれを強く実感したようです。
その時見ていて感じたことをお話しします。

これからお話することを文章だけでお伝えするのは非常に難しいのですが、施工者を決定する際に重要なのは、価格ではありません。

「同じ図面を基にして施工してもらうんだから、
 出来上がるものは同じなんだろう?
 だったらちょっとでも安いほうがいいじゃないか。
 相見積もりはそのために取るんだろう?」

と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その考え方は間違っています。

深く満足・納得できる家づくりを行う際には、
「誰(施工者)に作ってもらうのか=誰と家づくりを一緒に進めていくのか?」
ということが、設計者選びと同様にとても重要です。

企業としての魅力には、様々なものがあります。

 ○ 資本力(安定性)
 ○ 価格競争力
 ○ 技術力
 ○ 企画力
 ○ コミュニケーション力
 ○ 環境に配慮する考え方

など多岐に渡りますが、そのどれを重視するかは人によって様々ですから、どんな会社を選ぶべきかということは、設計者から押し付けたりすることは僕はしません。

もちろん、各クライアント個別のいろんな状況を考えた上で、
「あなたにとっては、今回はこの会社がいいんじゃないでしょうか」
という推選ぐらいは、求められればします。

会社にはそれぞれ社風や気質というものが存在します。

社風には経営者の考え方や理念がかなり大きな影響を及ぼすのは当然ですが、担当したスタッフ自身の考え方・仕事に対する姿勢というものがクライアントに高く評価されて

「この人(←担当者)がいる会社なら、お願いしてみることにしよう」

ということで最終決定に至ることもあります。

クライアントには上手く伝えにくいのですが、今回2社の見積書を拝見して設計者としての立場から施工者にいろいろ質問を重ねていくと、見積書作成にあたっての各社の姿勢・担当者の性格・企業体質というものが、僕には見えてきます。
そんなもの(←見積書)だけでホンマにわかるんか?と言われるかもしれませんが、それはもう如実に現れますよ。

見積書は文字と数字の羅列ですが、そこにきちんと浮かび上がってきます。

僕が感じ取るその各社間の違いや特徴が、同席して質疑回答を横で聞いているクライアントにもおぼろげながら感じ取っていただければいいなぁと思いながら、僕はいろんな質問や確認をしていきます。
これもうちの企業としての大きなサービスの一つだと、自分自身は考えています。

とまぁ、うちのことはさておき、あなたがこれから取り組もうとしている家づくりにおいては、

「誰と一緒に作っていくのか?」

ということを、ぜひよく考えていただきたいと考えています。

なぜなら、それが本当に満足のいく家が出来上がるかどうかという点において、後になってと~っても大きな意味を持ってくるからです。

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御所の町家を見せてもらいました

昨日、奈良県御所(ごせ)市へ行ってきました。
毎月1回ずつ(?)開催されている御所町(ごせまち)講座の講師として、町並とか建築について話して欲しいとの依頼を受けていて、その下見に行って来たのです。

参考に、と御所の古い町家3軒を見学させて頂くことができました。
(註:一般には公開されていません。今回は地元NPOの委員会メンバーの方が前もって話をつけておいて下さったので見せていただくことができました)

御所の町並はあまり有名ではありませんが、手付かずの民家がゴロゴロしていて、中には築後200年以上経過したものもいくつかあります。

冒頭の写真は今回見せていただいたお宅のうちの一軒です。
このお宅は、もともと旅館を営んでおられたそうで(←現在は旅館業を行っていません)、立派な中庭(↓)がありました。

その他に2軒、合計で3軒のお宅を見せていただいたのですが、最後のお宅はとても風流な民家でした。

玄関や、みせの間からは一見普通の民家のように見えるおとなしいデザインにしてあるのですが、奥へ入るほどに風流なデザインになっていくように設計されていて、作者(棟梁)やクライアント(施主)の意図がはっきり伝わってきました。
築後250年以上を経た民家(大和棟)だそうですが、化粧丸太仕事が随所に施されていて、襖の縁には春慶塗が、障子の腰板や襖紙にはいろんな絵が描かれており、使われている材料もかなり気合の入ったものばかりでした。

僕も数多くの民家を見てきていますが、築後250年も経った古い民家で、このように風流なデザインを施したものは初めて見ました。
外観はごくごく普通の大和棟型民家なのですが、中はまるで隠居用につくった山荘のような佇まいでした。
きっとこのお宅を作った方は、大変洒落っ気に富んだ方だったのでしょう。

御所町講座の僕の担当日程はまだ決まっていませんが、また決まりましたらお知らせします。
もしよければ来て下さい。

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愛嬌

今年の正月休みの間もそうだったのですが、最近、以前買ってすでに一度以上読んだ本を再読することが多いです(なぜかはよくわかりませんが・・・)。
今読んでいる本も4年前に買った本の再読ですが、なかなかいいくだりがあったので抜粋して紹介します。


――――――――(以下、その本からの抜粋)――――――――

ある人が故・松下幸之助氏にこう質問したそうです。


「ビジネスマンのもっとも重要な条件は何でしょうか」


この質問に、松下幸之助氏はこう答えました。


「簡単にいうと、みんなに愛されることですね。
 あの人がやっているのだったらいいな、買ってあげよう、
 と、こうならないといけない。
 みんなから愛されるような仕事をすることです。」


(中略)・・・これからの時代、ますますこの愛嬌というものが重要になってくる。
高度情報化の時代には、多くの情報を手にした者が勝つ。
いかに多くの情報を集められるかが勝負の分かれ目になるだろう。

しかし、1人の力で集められる情報には限度がある。
だとすれば、いかに自分で情報を集めるかではなく、
いかに多くの人に情報を持ってきてもらえるようにするかが重要だ。


明るく振舞う人、表情のやさしい人を見ていると、誰でも何となく話がしたくなる。
小さなことでも喜んで話を聞いてくれる人には、進んでその人のところへ情報を持っていきたくなる。
これが結果として莫大な情報量となっていく。


――――――――(以上、抜粋終わり)――――――――



これはPHP研究所代表取締役副社長の江口克彦氏の著書
『「きっと芽が出る人」の法則』 という本からの抜粋です。

この本の中には、こころの栄養になるような、とてもいい言葉がたくさん散りばめられています。
もし興味が沸いたら、ぜひ読んでみて下さい。おすすめです。


 


僕は日本民家再生リサイクル協会というNPO法人でボランティア活動に参加していますが、この活動を通じて知り合った仲間から自分が得ている情報・影響というのは本当に凄まじいものがあります。
(↑ボランティア活動の僕にとっての本当の恩恵の一つ)

自分自身、上記に書かれているようなことがきちんと実践できているとは思えませんが、それでもたくさんのとてもいい仲間にめぐり会えたことで、いろんな視野・考え方に触れ、書籍では得ることのできない情報をたくさん頂いています。



情報→インターネットという風にすぐ連想するような社会状況になりましたが、インターネット上で得られる情報というのは本当に使えるものは少ないと僕は感じます。
そんな情報過多の時代だからこそ、本当に大切な情報は人を通じてやってくるのでしょうね。
現代だからこそ、とてもいい言葉だと感じました。


僕も、もっともっとみなさんにかわいがられる人間になれるように努力していきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




m(_ _)m 


さとう

民家に関するセミナーのご案内

NPO法人・ひょうご新民家21という団体が主催するセミナーが、
3/11(日)に伊丹市の旧石橋家住宅で開催されます。
その講師として、受講者の皆さんの前で約2時間にわたり
僕がお話しさせていただくことになりました。

参加費は無料だそうです。
( → 無料ですが、参加費 数千円払っても惜しくないくらいの
濃い内容にすることを、僕がお約束します。
ちなみに、一般の本に書かれているような事も基礎知識として
多少お話しますが、ここでしか聴けない、どんな本にも書かれていない
という話に、より多くの時間を割きたいと思っています。)

まだ当日の内容については詳しく決めていませんが、旧石橋家住宅・ならびに隣接する岡田家住宅を実際に見学しながら

○ 民家に関する一般的な基礎知識
○ 伝統構法と在来工法の違い
○ 木材のこと

などを一通りお話しした後、参加者の皆様が抱えていらっしゃる悩みや相談などにお答えする形でセミナーを開催できればと考えています。
過去の再生事例(工事中の写真)やコスト、古民家購入時の基礎的なチェックポイントなどについてもお伝えする予定です。
今後のみなさまの民家再生計画のお役に立てていただければ幸いです。

詳しくは下記ホームページをご覧下さい。

ひょうご新民家21のサイトはこちら
(↑上記トップページ中ほどにある、
民家セミナーのイラストをクリック)

 

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桐油と亜麻仁油

うちの現場では、板によく油を塗って仕上げます。
その時に一番良く使うのが、上記の亜麻仁油(左)と桐油(右)です。
どちらも植物性の油です。
同じ植物性の油でも、これだけ色が違うものかとビックリしますが、特に桐油が劣化しているわけではありません。
こういう色です。

桐油は撥水性が強く、床板やテーブルの天板などに塗っておくと、水をこぼしたりしても水をはじいて染み込みません。
撥水加工した傘の上を水玉が走るようにはじきますよ。

でも桐油は粘性が高くて、とっても×とっても塗りにくいので、実際には塗る時に左の亜麻仁油(あまにゆ)を混ぜて塗りやすくしたものを伸ばしていきます。

この現場では、外壁に張る杉板、屋根のケラバの際垂木(きわだるき)、床板に塗るための油として購入しました。

桐油は撥水性能は抜群ですが、とにかく乾かない・・・。
塗った後1週間くらいは置いておかないと、触ったら油がつきます。

桐油は昔は番傘に塗られていました。
柿渋で染めた和紙の上から桐油を塗って傘にしたんですから、昔の人はよく材料を知っていたんですね。

他にも建築でよく使う植物油には、荏油(えごまの油)、菜種油などがあります。
ケヤキの大黒柱のオイルフィニッシュの際には、荏油や菜種油などが良く使われたようです。
荏油や菜種油は桐油に比べると乾きが早いですね。
3~4日で乾きます。

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民家再生の仲間がスタッフを募集しています

僕が活動に参加しているNPO法人・日本民家再生リサイクル協会の仲間である(株)桑野建設さんが女性スタッフを募集しているそうです
これまで上記協会のためにも献身的に尽力してくれた女性スタッフの方(←今まで本当にありがとうございました。とても一言では感謝しきれません。)が3月末で退職されることになり、その欠員を埋めてくれる新規スタッフを探しているとのこと。


桑野建設の社長も含めた数名の上記NPO委員会メンバーと先週末に飲んだ折、
「誰かいい人おらへんかなぁ・・・」
と話しておられました。
ハローワークなどを当たっているようですが、なかなか見つからないそうです。

「ホームページに書いとけば?」
と僕が進言したのですが、桑野社長はインターネットとかメールとかに疎いので、どうもピンと来ていない様子で、じゃあうちのブログに書いときますよということになって、今ここで紹介しているわけです。



希望している条件は、


 1. 車の運転ができること
 2. 20~30代の女性であること
 3. 民家再生に興味がある(または好きである)こと


ということのようです。
お客さんとの打合せに社長と同行してもらうことが多いようなので、場の雰囲気を和らげるためにも男性ではなく女性のスタッフが必要なんだそうです。
お客さんと話したりすることが好きな方の方がいいようですが、建築に関する深い専門知識を持っていなくてもいいそうです。
(↑といっても、全く建築に興味がない方はちょっと遠慮した方がいいでしょうね)


会社の所在地は大阪府八尾市(近鉄八尾駅下車 徒歩数分)なので、そこまで通える方で「やってみたいな」と思われた方は連絡してみて下さい。

「さとうのホームページを見たんですけど」
と言っていただいて桑野社長あてに連絡していただければ大丈夫です。
桑野建設のホームページからメールや問合せフォームから連絡でもOKだと思います。

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着物問屋

この週末、丹後に行ってきました。
ホームページを見て下さった方から、
「民家を購入し店舗に改装したいので見に来て欲しい」
との連絡を受けたため、その民家を調査しに行ったのです。

この家は、もともとこのあたり一帯で最も大商いをされていた着物問屋さんだったそうで、それが使われている材料に現れていました。

玄関は丹後あたりの民家によくある形の、太いごひら(←断面が長方形の部材のこと)のケヤキを使った構成で、ちょっと豪華かな?というぐらいだったのですが、中を見てびっくり。
5寸角の桧の通し柱が12本建って、梁や床板には無節のきれいな松の材料が使われ、玄関の式台には巾1尺の桜の上がり框が使われていました。
よっぽど手広く商売していたんだろうなぁ・・・ということが、材料や仕事からよくわかる建物でした。

これまでに20軒くらい丹後のいろんな建物を観てきましたが、この地方の民家は京都の大工のやり方に割と近いところがあります。
外観や構造の組み方は京都とは少し違いますが、内部の造作や材料の使い方などは、京都の流れを汲んでいるようで割とあっさりまとめるケースが多いですね。

2日間かけて構造体を調べて写真を撮って帰ってきたので、これから建築基準法や自治体の関連条例などを調べていって改装方針を考えていきます。

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自然の力

僕は2004年の6月からメールマガジンを発行していますが、
ときどきその読者のみなさまからいろいろなメールを頂きます。
(本当にありがとうございます。
 僕がメールマガジンを書き続けられるのも、
 読んで下さるみなさんのおかげです。)

そんな読者の1人であるN氏が、前回のメールマガジンを読んで
とても興味深いお話をメールで教えて下さいました。
「ぜひうちのブログで紹介させて頂きたい」
とお願いしたところ、快諾して下さったので以下に抜粋・転記します。

なお、N氏は大手新聞社で新聞記者をされており、その取材の中でこの話を聞かれたそうです。

――――――<以下、N氏のメールより転記>――――――

全く余談ですが、私の仕事のお話で。
カビの繁殖で話題になった、明日香村の国宝壁画、高松塚古墳や
キトラ古墳はご存じでしょうか。
生えては取り除いて殺菌し、また別の種類がわいてきて、、、というイタチごっこを繰り返し、キトラ古墳の場合、今では20種類以上のカビや酵母が常駐しているそうです。

1300年も無事だったのに、30年、あるいは数年でどうしてこんなに変わってしまったのか?
一言で言うと、人が入ったことで急激にカビが繁殖したんですが、実は、そう単純でもないようです。

話は飛んで、フランスへ。
ラスコーの壁画はご存じですか。
あの、牛の絵で有名なやつです。
日本では余り知られていませんが、ラスコーも近年、カビが生えて大変なことになっていたのです。
今は閉鎖し、ようやく落ち着いてきたようですが、ごたごたともめたあげく、
「薬剤を使ってはいけない」という教訓が、導き出されたそうです。

4年ほど前、まだ文化庁が高松塚の劣化をひた隠しにしていたころ、文化庁の担当者がラスコーを視察し、
「薬で消毒してはいけないよ」
と当たり前のように言われ、ショックを受けたそうです。
当時、高松塚では、エタノール、ホルムアルデヒドの薫蒸など、カビが出るたびに薬剤をバリバリ使って、それでも収まらずにいましたから。

結論を言えば、
1)薬剤を使うと、必ず耐性菌が出てきたり、薬そのもの(エタノールなど)
  をえさにする菌が出たりして、悪循環を繰り返す

2)完全に殺菌してしまえば、それまで石室内で保っていた生物同士の
  均衡が崩れ、しばらくすると特定のカビや菌が大繁殖する

ということだそうです。

かつて、高松塚古墳の壁画保存に取り組み、それこそカビとイタチごっこをした経験のある先生は、
「結局、自然を甘く見すぎたんです」
とおっしゃっていました。

今のところ人間は、どんなにあらがっても自然に勝つことはできず、自然をうまく利用することしかできないということなんでしょう。
だからこそ、発酵食品という素晴らしい知恵が生まれたんでしょうね。

建物も、同じ事がいえそうで・・・。

――――――<以上、N氏のメールより転記>――――――

都合の悪いことが起こってきたときに、
「封じ込めよう」
とか
「抑えつけよう」
と考えること自体が、そもそも間違っているんだと教えてくれていますね。

とても深い示唆に富んだ、いい話を聞かせていただきました。
Nさん、どうもありがとうございました。

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伝統木造構造体の震動実験に行ってきました

兵庫県三木市に、どえらい施設があります。
E-diffenceというものですが、どんなものかというのを一口で説明するならば、

「6階建以下の建物を上に載せて、実際に地震を起こして揺らすことができる
実験台」

です。
そんなものがあるのか!って感じでしょ?
一昨日、そこで伝統的な木構造物を実際に揺らしてみる実験が行われましたので行ってきました。

これがその実験棟です。
この中に体育館が10個くらい入りそうな、大きながらんどうの建物です

ここではこれまでにも、こんな実験が行われています。
(↑上記リンクをクリックすると過去の震動実験の動画が見られます。
ただし、ダウンロードに時間がかかりますのでご注意ください
建物はもちろん実物大で、1/2に縮小された模型などではありません。)

今回は上の写真のように、2棟の伝統的な構法で作られた木造平屋の建物をe-diffence 実験棟内に作って揺らすという実験が行われました。
その挙動を調べて耐震研究に活かすというのが今回の実験の目的です。

左右の建物は、屋根を除いては構造的に全く同じです。
屋根を架ける方向だけが違います。
(画像をクリックして拡大してみていただけると、違いがよくわかります)
でも、これだけで挙動にかなりの違いが出ました。

実際にいろんな地震波を入れて揺らしてみると、ギシギシと音を立てながら揺れました。

わかりやすく結果だけを申し上げると、左の建物の方が大きな振幅で揺れ、右の建物の方が振幅は小さかったです。

柱の足元(柱脚)と柱のてっぺん(柱頭)との間の傾き度合い(←専門的に言うと層間変形角)は、

左の建物・・・傾き:1/20 rad
(高さ3.5mの柱が、柱頭部で3.5m×1/20=17.5cm傾いた)
右の建物・・・傾き:1/40 rad
(高さ3.5mの柱が、柱頭部で3.5m×1/40=8.75cm傾いた)

という具合でした。
つまり、揺れ巾の差は2倍ということになります。
なぜこうなるのか?ということを解説すると、物理の講義をはじめないといけないのでここでは割愛します(※)が、これは興味深かったですね。

違いが出るだろうということはもちろん予測していましたが、これほど大きな違いが出るとは思っていなかったのでビックリしました。

木造専門の建築家としては、感じるところが多かったとてもいい経験でした。
○ 建物の重心の高さによる運動エネルギーの違い
○ 荷重および耐力壁の配置バランスと受け方
○ 構造体の組み方(仕口の働き)と抵抗力
○ 地震力によって生じる建物への破壊力の逃げ方
などなど。

これまで頭の中でそれぞれバラバラに断片化されていたパズルが、ピタピタピタっとくっついて、「なるほどなぁ」と一枚の絵になった感じでしたね。
今後の設計に活かしていきたいと思います。

今回の実験を実行して下さった方々に感謝いたします。
すばらしい実験でした。

※ もしこの物理の講義を聴いて(読んで)みたいという方は、
コメント欄にその旨書き込んでみてください。
希望者が多かったら解説しますが、ちょっとややこしいですよ(笑)。
高校物理程度の内容ですが。

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