先日クライアントのNさんと打合せをしていた時に、言われてと~ってもうれしかった言葉がありました。
これからつくろうとしている僕たちの家は、確かに自分たちでお金を払って作ってもらう家ではあるが、自分たちだけのためにつくるわけではない。
(現在はまだ設計の段階だが)もうすでに何だか自分たちのモノではないような気がしている。
さとうさんに頼むということはそういうことだと思っている。
自分たちが住まなくなった後にも建物は残って、他の人が住み続けられるようにバランスの取れた価値のある建物にしておいてほしい。
一言一句は正しくはありませんが、このような趣旨のことを言っていただきました。
もう光栄の極みで、打合せの最中、密かに感動しておりました(涙)。
Nさん、ありがとうございます。
Nさんは京都市内にご自宅を新築されるのですが、昨秋静岡で行った新月伐採時に京都から静岡の山奥まで出向いて伐採作業に立ち会っていただきました。
現在乾燥中のこの木材を使って来年から建て始め、竹木舞下地を編んで土壁をつける家のため、完成は再来年の予定です。
僕の提案にご賛同いただいて、上述のように時代に逆行しているようなことばかり(それとも最先端か?)実行しようとしています。
実はこの家の計画をこの企画に応募するつもりです。
家は法律上は個人所有であっても、最終的には社会資産。
そんな考え方が一般に定着するまでにはまだまだ時間がかかるでしょうが、確実にその方向へ向かいつつあると思います。
だからこそ、今考えておかなくてはならないこと、こだわっておくべきことがいろんなところにあるのです。
今後数十年だけよければいい、ではダメなのです。
本当に美しいとはどういうことか?
年月を経ても絶対に変わらない、普遍的な価値とは何か?
ということを見つめて建物をつくり続けて行くことが僕自身のライフワークです。
昨日は自分の誕生日だったので(笑)、たまにはこんな力の入ったことも書いてみました。
みなさまいつも読んでくださってありがとうございます。
これからも、たくさんの皆様に役立てていただけるような情報を提供していけるように励んでまいります。
あなたはどちらが好きですか?
30年後に「そろそろ建て替えようか」と言われる家、と
「この家は200年前のおじいちゃんが建てたの」と2208年に言ってもらえる家
月別アーカイブ: 2008年4月
天井のデザイン
いやぁ~、やっぱり現場が始まると、ついブログを更新する頻度も増えますね。
昨日は大屋根の化粧野地板を張る作業を行いました。
上の写真は張りあがった大屋根の化粧野地板の上に立って撮った写真です。
お客さんから特にご指定がない場合、うちで設計する建物の2階には平らな天井を張りません。
野地板という、屋根の下地用の板をカンナで仕上げてそのまま室内の化粧天井面として使います。
なぜなら、そうすることで小屋裏の木組みがきれいに見えるのと、空間にダイナミックさが出るから。
もう1つ言うならばデザイン的に軒を低く抑えられるからです。
(一方で電気の配線のやり場に困るなどの弊害もありますが)
上の写真は、2階の室内側から天井面を見上げたところです。
まさしく工事中の状態といった写真ですが、先述の通り天井面は出来上がりもこのままです。
何の変哲もない、節も普通にある無垢の杉板を削って張っているだけですが、とても美しいですよ。
(と言っても、ちょっと上の写真だけでは伝わらないでしょうね。)
ただ、構造材は室内の雰囲気を決定する重要なデザイン要素でもあるので、断面の大きさにはとても気を使います。
木造建築の美しさは、やはり屋根に占める割合がとても大きいです。
何も足さない、このような素のままの木組みの美しさを出すために、照明の方法や内装なども含め、細心の注意を払っています。
もしあなたがこれから家を建てようとされているのなら、2階の天井だけでもこんな風に見せてしまうのもきっとおもしろいと思いますよ。
木が好きな方には特におすすめします。
変に凝ったデザインをいろいろこねくり回すより、スパッと小屋裏を見せてしまう方がデザインとしてもとても美しく仕上がります。
ちなみに、同じ手法で昨年の秋に出来上がった別の現場の写真がこれ( ↓ )。
※画像をクリックすると拡大できます
ね、きれいでしょ?
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7mの垂木(たるき)
昨日に引き続き、西宮の現場から。
棟が上がり、作業が屋根仕舞へと移っていきます。
下の写真は母屋・桁に垂木(たるき)を打ち付ける作業をしているところです。
今回の垂木には、断面120mm×60mm、長さ7m(継ぎ目なし・一本物の杉)のを使います。
( ↑ これにもちゃんと意味があるんですよ)
一般に垂木というと、だいたい60mm×60mmとか45mm×75mmくらいの大きさのもので長さ4mの材料を継いで使うことが多いので、異常に大きい垂木です(笑)。
↑ 工事とは関係ありませんが、すごい眺めでしょう?
(画像をクリックすると拡大表示できます)
上述の大きな垂木を固定するためのビスがこれ。
長さ210mmというこれまた異常な長さのビスです。
ビスと言うよりもむしろ、細いボルトという雰囲気です。
↓ こんな感じでインパクトドライバを使って垂木を母屋や桁に固定していきます。
うちで設計する建物では、構造材をしっかりと素直に見せるので、材料の大きさ(断面寸法)や間隔などを決める際には、構造面・デザイン面の両方から詳細に検討して、全体のバランスを考慮します。
今回も力強い垂木が印象的に見える意匠になりそうです。
どうぞお楽しみに。
この垂木の上には、この後で無垢の化粧野地板(杉)を貼っていきます。
屋根仕舞が終わるまで、何とか雨が降らないことを祈ります。
仲間入り
4/25・26と2日間かけて、西宮市内の現場での建方作業が終わりました。
高台 × 道路が狭い上にきつい坂道 × 住宅地という、施工上はかなりの悪条件(でも竣工したら眺望はバツグン♪)が揃っている現場で、かなりいろいろ苦労しています(汗)。
近隣のみなさま、ご迷惑をおかけしております。
ご理解・ご協力に深く感謝申し上げます。
建方が終わって、建物の骨組みやおよそのボリュームが把握できる状態になりました。
昨日の午後、近隣の住宅と一緒に並んでいるのを見て、どうやらうまくまわりの家に仲間入りさせてもらえそうなくらいの位置・ボリュームに納まりそうで、一安心です。
今回は高知県梼原町森林組合さんに木材をお願いしました。
梼原町森林組合はFSCという国際認証規格に適合した木材を出荷しておられます。
全体の刻みは工場での機械によるプレカット加工ですが、柱と梁の仕口・梁同士の継ぎ手などには金物を使わずに込栓で引く形をとっています。
(下の写真中、小さい四角穴が込栓を通す穴です)
そして通し柱と胴差の仕口( ↓ 写真)など、一般にどうしても機械で刻むと金物に頼る仕口にならざるを得ない所では、要所要所でわざわざ大工さんに手刻みをしてもらっています。
関係者のみなさん、いろいろ注文の多い設計者ですみません。
でもおかげで金物の寿命に頼らない構造体ができて一安心です。
この家は何代使ってもらえるのかな?
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建前です
金継ぎの器
昨日、京都市内にある料亭・室町和久傳へクライアントのNさんと食事をしに行きました。
なぜわざわざ和久傳なのか?というと、中塗り土切返し仕上げという土壁のテクスチャーをNさんに確認していただくためです。
中塗り土切返し仕上げというのは、昨今よく見られる珪藻土や化学繊維のじゅらく壁(または本式の水捏ねじゅらく)などの上塗りをかけずに、少しきめの細かめな中塗り用の土と水だけで作った壁土を塗りつけて仕上げるもので、少しくだけた感じに仕上がる土壁です。
昨日実物を見てその質感を確認していただいて話し合った結果、京都市内で来年着工するNさんのお宅では、この中塗り土切返し仕上げでほとんどの壁を仕上げることになりそうです。
土壁が大好きな僕は、もううれしくてうれしくて今からとってもワクワクしています。
和久傳では昼のコースを食べたのですが、とても繊細で細やかな気配りの行き届いた料理に大満足でした。
(ほんまに美味しかったですよ)
その和久傳の料理のほとんどが、また気の利いた器に盛り付けられて出されるのですが、陶器の多く(8割くらい)が金継ぎで繕われていました。
( ↑ 写真、撮ってくるべきだったですね・・・。
すみません。堪能し過ぎました)
でも、料理に徹底的に心を砕いているのが味からよ~く判るので、その金継ぎが施された器から
「欠けたり割れたりしても、器を大切に使っていますよ」
という気持ちが伝わってきて、すごく良かったです。
また行きたいな。
樹齢300年の桜
先週末、奈良県宇陀市に行ってきました。
日本民家再生リサイクル協会で今年の11/1・2に開催を予定している、民家フォーラム2008の取材のためです。
宇陀市内には、松山地区という伝統的建造物群保存地区に指定されている古いまちなみが残っています。
このまちなみ保全や、地元で開催されている伝統的なお祭りなどについて、関係者の方にお会いして詳しいお話を伺っています。
今回お話を伺うことができたのは、
〇 あきの蛍能
〇 田原/菅原神社の火祭り
の関係者の方です。
蛍能というのは、6月に神社の境内にある能舞台で開催される能で、合間に蛍を放すそうです。
もちろん、開催は夜間。
能と蛍という組み合わせにとても興味を覚え、ぜひ今年の開催日には行ってみようと思っています。
今年は6/21(土)に開催されるそうです。
取材の合間に、有名な又兵衛桜(またべえざくら)を見に行ってきました。
推定樹齢は約300年だそうです。
さすがに若い桜のような勢いは感じられず、
「あと何年桜を拝ませてくれるのかなぁ」
と行く末を少し心配してしまいましたが、300年とはすごいですね。
この日の宇陀市は全域でちょうど桜が満開で、とてもきれいでした。
何気ないあたりまえの農村風景が、新緑と桜と春の陽気もあってとても美しく感じられました。
茶事
もう一週間も前のことですが(苦笑)、いつも稽古に通っている西宮の茶道教室で生まれて初めて茶事(ちゃじ)に参列しました。
茶事全体の流れはこんな感じになります。
お昼前に集合し、席入りした後でまずは懐石料理を頂きます。
季節を感じる懐石料理は同じ茶道教室の先生と生徒のみなさんが協力して作ったものですが、とっても美味しかったです。
(僕は前日の準備手伝いに行けませんでした・・・すみません)
懐石料理が終わった後は一旦退席(中立ち)し、2度目の席入りをします。
その後濃茶と薄茶を頂いて茶事は終了。
開始(11:30)から終了(16:00)まで、所要時間は約4時間半。
「さとうさんもそのうちに茶事の亭主をつとめられるようになりますよ。大丈夫」
と先生は言ってくださいますが、ホンマにいつになることやら(笑)。
現在、僕は薄茶の平点前(ひらでまえ)の稽古を積んでいるところです。
なかなか作法が憶えられません・・・。
2007新月材の玉切開始 その2
前回の記事投稿時に
「続きは明日」
と書いたくせに、なんと3週間も間が開いてしまいました。
申し訳ありません・・・ m(_ _)m
新月伐採―玉切り工程その2を続けます。
長いままで山の斜面に横たわらせておいた木を平場まで引っ張り出してきた後、材料の性質を見ながら何メートルで玉切りするか?を見極めます。
木材には育っていくうちにできてくる
〇 自然の曲がり
〇 節
〇 太さ(木の直径によって、どんな大きさの柱・梁が採れるかが変わります)
などがそれぞれに違いますので、個々の木材に合った大きさ・長さで玉切りしてあげることになります。
(↑これが肝心!)
下の写真は玉切りをしている最中です。
この木は根元から木の先端までの長さが29.5mありました(長ッ!)。
この木は根元のあたりに曲がりが少なく、節も出ないようなおとなしい木でしたので、7.5mの位置で玉切りして目に近い2階床の梁として使うことにしました。
この木は、製材したらきっときれいな木目が出てくると思いますよ。
製材するのが今からとても楽しみです。
下の写真は玉切りした木口の写真です。
年輪がよく詰まっていて、なかなかいい材料でした。
昨秋の伐採したての時とは、樹芯の色がぜんぜん違います。
4ヶ月間の葉枯らしによって、木の中の水分が蒸散作用によって消費されたことが一目瞭然です。
今回、ぜひ調べてみたかったことがあります。
葉枯らしをしたことで、木の含水率がどのくらいまで下がっているのか?
を調べることです。
今回の木材を製材する際に協力していただく予定の杉山製材所さんから、木材の含水率測定器をお借りしてきました。
上の写真のように、木材の含水率を測りたい部分に直接含水率測定器を当てると、その部位の含水率が測定器に表示されます
杉山製材所さんは、5年前から静岡市内で天然乾燥材のみを扱っておられるという、何とも頼もしい製材所です。
以下に今回測定してみた4本の木の含水率を列挙しておきます。
2007年11月の新月期伐採材 | |||
4ヶ月葉枯らし後玉切時の含水率測定結果 | |||
材料名 | 部位 | 1番玉の含水率 | 2番玉の含水率 |
桧-1 (S39) | 赤身(芯材部) | 35.0% | 43.8% |
白太(辺材部) | 32.1% | 50.2% | |
杉-1 (S41) | 赤身 | 40.5% | 57.2% |
白太 | 50.8% | 62.5% | |
杉-2 (S42) | 赤身 | 30.6% | 43.0% |
白太 | 49.6% | 65.5% |
今回調べた上記の結果から、
〇 根元から遠いほど含水率が高く(1番玉<2番玉<3番玉)
〇 桧・杉ともに白太(辺材)よりも赤身(芯材)の方が含水率が低い
ということが実感としてわかりました。
本当は伐採時の含水率も測ってデータを採っておけたら良かったのですが、昨年末にはそこまで準備ができませんでした。
これは今秋の新月伐採時の課題としてまた実行する予定です。
ちなみに、伐採直後の木は含水率が100%を超えているため、なんと!水に浮かびません(沈みます)。
( ↑ 桧の芯材部は除く)
木が水に浮かばないなんてちょっと信じられないでしょうが、ホンマの話です。
でもしばらくすると木材の内部の水分も抜けてきて、水に浮かぶようになります。
ここで最初の山での滞在時間はは時間切れ。
もう少しじっくり見ていたかったのですが、この日は日帰りで2ヵ所の山を見て回る強行軍だったので、同じ静岡市内のもうひとつの山へ向かうことにしました。
次はYさんの山です。
標高700m、樹齢50年生前後の山です。
Yさんの山では、造材作業が進んでいました。
玉切りをした直後に、木の木口にすぐ個別ナンバーを打っていきます。
上の写真中、白く見えているプレートのようなものがそれです。
今回伐採した新月材にはすべて固有の番号が打たれ、一般材とは区別ができるように履歴を残しています。
この後、林業家のSさん、Yさんが出材作業を進めてくださり、現在は製材の準備が整いつつあります。
今月中に製材にとりかかるので、静岡へ行ってきます。
また製材の結果はブログでご報告しますね。
どうぞお楽しみに。