月別アーカイブ: 2011年3月

基礎工事進行中です

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神戸市内で進行中の I 様宅では、現在基礎工事が進行中です。
上の写真は先週末の様子ですが、掘り方・地業工事が完了し、これから墨出しをして鉄筋の組み立てに移ろうとしているところです。

白っぽく見えているのはポリエチレン製の土間シートで、これは基礎の下から室内へ上がってこようとする湿気を遮断する役目があります。

周辺のグレーに見えている、少しへこんだ部分には外周部の型枠墨出しをするため、捨てコンクリ-トを打設してあります。

当初の計画では、地盤改良剤を投入して既存の砂を撹拌・混合し、表層改良を行う予定でしたが、解体・掘り方工事を行う中で、現場の砂がとても良質な山砂であることがわかってきたので、地盤改良剤を混入するのはやめました。

改良剤を用いなくとも、少しずつ締め固めることで、木造住宅の積載荷重に耐えうるに充分な地耐力が得られることが明白だったからです。

地盤の改良方法はその土地の地質によって事情が変わってくるのですが、地盤改良剤を土に混ぜて撹拌する表層改良の場合に用いる改良剤はセメントのようなものなので、改良後の土はカチンコチンに固まってしまうだけでなく、アルカリ性の性質を持つようになってしまいます。

カチンコチンになってしまった改良体(←改良された土のこと)は基礎の下に埋まっているわけですが、将来、何らかの事情で建物を解体せざるを得ないという状況になった時、その改良体もハツリ機などで壊して撤去することになります。

ですから将来にわたって環境に与えるインパクトを考えると、地盤改良はできればしたくない・・・というのが建物をつくる側としての意見です。
ただ、軟弱地盤の場合は、地震時の揺れや近隣を通る大型車両によって引き起こされる微振動などが増幅されて建物に伝わることになってしまうので、快適性・安全性の観点から、建物の荷重と地耐力のバランスを考慮して地盤の方が柔らかい、という判定結果が出た場合には何らかの改良を施す、ということになります。

地盤改良にはいろんな方法があるのですが、コストだけでなく、改良深度(軟弱地盤の深さ)や現場の地質、搬工事車両の進入経路などによって適切な方法を決定することになり、一概にどれがいいということは言いきれない工種です。

小屋組みの迫力

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上の写真は、兵庫県淡路市で今秋から再生工事に着手する予定になっている、t様のお宅の小屋組みの写真です。
以前にもちょっとご紹介しましたが、このお宅は今から100年ほど前に移築されてきたお宅です。
幾重にも丸太材が折り重なっている様は、下から見上げるととても迫力があります。

もともとこの小屋組みは天井板に隠れていて見えなかったのですが、今回の再生工事へ向けて、t 様のご主人がお休みのたびに少しずつ解体作業を進めて下さっているおかげで、全容が明らかになってきました。

今回の再生工事では、この小屋組みがきれいに見えるようにリビング上部に吹抜けを設ける計画です。

今から竣工した姿を想像すると、ワクワクしてきます。

循環

先日、クライアントのN様(京都市) より大変嬉しい申し入れがありました。

静岡へ植樹に行き、伐採して使わせてもらった木を90年前に植えてくれた林業家のお墓参りをしたい
というものです。
もう僕は、この知らせを受けた時にいたく感動しました。

N様のお宅 は2010年3月に完成しました。
2007年に設計に着手し、N様はその年の秋に静岡へまで90年生の杉の伐採立会いに来られました。
その後伐採した木材はゆっくり自然乾燥させ、工事は2009年から2010年にかけて約1年間かけて行いました。

伐採し、家が完成したら普通はそこで終わりです。
しかし、家に住み始めてからしばらく経って、再び林産地へ足を運んで苗木を植えて下さる。
これは素晴らしいことだと思うと同時に、やはり家をつくるという一連の流れの中では、本来こうあるべきだろうという気持ちも自分の中で芽生えてきました。
N様のおかげです。

もともとこの話は、木材を提供してくれた林業家からN様への
「今年でなくてもいいですから、春になったら山へ木を植えに来ませんか?」
というお誘いから始まったことです。

僕もこれまで伐採や製材にはしょっちゅう立ち会ってきましたが、よく考えてみると植樹を行ったことがありません。
恥ずかしい限りです。

木を伐採し使わせてもらったら、今度は苗木を植えに山へ行く。
そうやって新しい命を育み、次代につなげる。

これからは東風では当たり前のこととして毎年取り組んでいこうと思います。
今回の植樹は今月末に静岡市内で行いますが、林業家のご協力が頂ければ、近畿圏でも行いたいと思っています。

N様、お申し出て下さり、本当にありがとうございました。

高齢の天然木に相対する時

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上の写真は、昨日うちのスタッフが奈良の現場から持ち帰ってきた桧の切れ端です。

写真は3枚の板を並べ合わせて撮影していますが、それぞれの板巾は180mmあって、白太がほとんど入っていない赤身の板です。
これ、実は植林された桧ではなく、高齢(150-200年)の天然木(実生の木:みしょうのき)です。

節はありますが、色・艶・木目など天然木ならではの素晴らしい味が出ています。

これは奈良市で工事中のO様邸で使っている材料なのですが、この木はO様のお義父様(林業家)が伐採され、倉庫でゆっくりゆっくり自然乾燥させた板を加工したものです。

さすが天然木だけあってすごい芳香です。
昨日この3枚だけ持って帰ってきてから、いつも杉の香りが幅を利かせている東風の事務所の中を、桧の香りが席巻(?)しています。

こういう木に相対すると、まず心の中に生じてくるのは畏敬の念です。

この木が生まれたのは19世紀の初頭。

枝の先からポトリと地に落ちた桧の実が発芽し、探しても探しても見つけられないような、小さな小さな芽を出します。

自分よりもずっと背丈の高い下草に日光を遮られ、劣悪な生育環境で駆逐されそうになりながらも必死で生きる実生の木は、数年経ってもなかなか大きくなれません。

その様子は伐採した後に年輪の中心部をみるとよく判ります。

下の写真は静岡で樹齢約120年の実生の杉の木を伐採した直後に撮ったものですが(2009年)、樹芯付近の年輪同士ががとても緻密に近接し、なかなか大きく育てなかった様子がよくお判りいただけると思います。
(ぜひ画像を拡大してご確認下さい)
 
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このような来し方の木を伐採・製材し、建築用材として使わせていただくというのは、大変畏れ多いことです。

自然の力、木の生命力、人間の一生では及ばない時間の流れなどに思いを馳せるともう言葉になりませんが、用材として使わせていただく際には後世にわたって愛され、できるだけ長く使って頂けるようにと考えて大切に扱うのが我々の使命です。

自活できる家

今回の震災では、茨城県に住むうちの両親も断水・ガス停止などの影響を受けました。
(幸い、電気・インターネット回線はずっと使えていましたので、電子メールでのやりとりが一気に増えました)

おかげさまで家も家族も無事なのですが、断水になって困るのは、やはり手洗・洗濯・トイレ・入浴などです。

お風呂に残り湯があったおかげで今回トイレは何とかなりましたが、神戸の震災の時もみなさん同じ苦労をされていたことを思い出します。

両親の家の周辺でも、携帯用の水のタンクなどが売り切れて入手不可能になり、関西から宅急便で送ろうとしても、茨城県へ向かう宅急便は受付けてもらえないという状況でした。
ただ、昨日からは水も使えるようになって、ありがたい限りです。

今回、うちの実家の近くに井戸水を使われているお宅があったおかげで、断水中には水を分けて頂いたりお風呂に入れて頂くことができました。
ご良心に深く感謝しております。

こういう有事の際に、太陽光発電設備や井戸水など供給に頼らない自活できる資源を自宅に持っているということは、とても大切なことだなと改めて感じました。

雨水タンクなども、手軽に始められますが、非常時のトイレ排水用水として備えておくことはとても有用ですよね

今回の震災を契機に、住宅の考え方も今までとは少し違った価値観へとシフトしていくかもしれないなと思う一方で、阪神・淡路の震災にも同じことがあったと思うのですが、さほど大きな流れにはなりませんでした。

今後みなさまの家づくりに関らせて頂く中で、有事への備えについても常に注意喚起をしていく役割を、専門家である自分たちが務めなくてはいけないと感じています。

被災地の皆様へ

このたびの震災情報を見聞きするたびに、あまりの惨状に言葉になりません。
まずは被災地の皆様のご無事と、犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

阪神・淡路の震災の時もそうでしたが、本当に必要な方への情報網を妨げないためにも、電話は極力控え連絡は可能な限りメールにしています。
震災直後から、電話は通じなくとも携帯メールもe-mailも通じています。

Googleさんが提供している、こういうページもありがたいですね。

本当は現地に入って微力ながらも何らかのお力添えをしたいところですが、むやみに現地へ向かうことは、救援物資の遅延や交通の混乱を招く一因となるため、今自分の居る場所でできる支援は何なのか?ということを一生懸命考えています。

僕が副代表を務めている、日本民家再生協会でも、被災地支援のために何かできることはないか?ということを、事務局長と相談しながら検討しているところです。

募金を募って義援金を送ることや、被災地での建物診断による危険/安心判定の実施は今後行われることになると思いますが、それ以外にも何かお役に立てないかということを模索しています。

阪神大震災を経験していない息子には、今テレビで放映されている惨状をきちんと見て、地震や津波が起こった際にはどういうことになるのか覚えておけ、と伝えました。

建築の世界では、今回のような地震は、数百年に一度の頻度で起こる極めて稀な地震と位置づけられていますが、このような震災がここ十数年で日本国内だけでも何度も起こっているということは、今後我々がより安全な未来を築くための試練という側面もあるのではないかと受け止めています。

寒い中、水も電気も使えずに、必死に復興に臨む被災地の皆様、どうかご無事でおられる事をお祈りしております。

みんなで力をあわせて、一日も早く被災地の皆様に平穏な生活が戻るように復興しましょう!

大阪の診療所 改修計画中

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大阪市のど真ん中で、高層ビルの中にある診療所様の改修計画を進めています。
この物件は内装に木を使って仕上げる予定なのですが、ご相談を頂いたのはもう3年も前のことになります。

途中、ビルの都合で計画を中断したりといろいろ紆余曲折があったのですが、今年になってからトントンとプランがまとまり、実現に向けて動き出しました。

ここ2-3ヶ月で工事を行う予定なのですが、ビルの内装なので内装材にも制限がかかり、準不燃または不燃材という燃えにくい材料を使うことが義務付けられます。

昨日はその準不燃の杉板の納期や価格の打合せで、神戸の代理店さんへ伺いました。

4月は今以上に忙しくなりそうです。

大工のセンス

今日、奈良市・O様邸の現場で打合せがありました。

O様が来られるまでに現場の各所を見ていると、
「おっ♪」
と思うような仕事がありました。

下の写真がそれです。

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一目見ても気付かないと思うのですが、上の写真の木は2つの異なる木を継いでいます。

上半分は構造上の柱ですが、下半分は化粧の枠(戸当たり方立て)です。

大工さんが木目の合いそうな木を探してきて継いでくれました。
こういうの、ほとんどの人は気付かずに見過ごしてしまいそうですが、とてもうれしい心遣いですね。

この現場の木工事をお願いしている大工の藪中さんは、奈良県吉野在住のベテランの大工さんですが、大変気が細やかで仕事も美しく、素晴らしい職人さんです。 

薮中さん、今後ともどうぞよろしくお願いします。

上棟とおかめ

上棟の際に作る、御幣(ごへい)というお札のようなものがあります。
長さは1.5m位の細長い板のようなものですが、それにはおかめの面をつける地域があります。

これはもともと京都で始まった風習だと思いますが、今解体工事行っている神戸の現場でも、このおかめの面が付いた御幣が小屋裏から出てきました。

おかめ

おかめは鎌倉時代に千本釈迦堂(京都市・国宝)を建てた棟梁の奥様だった人で、下記のような云われが残っています。

おかめの物語

鎌倉時代に大報恩寺の本堂(釈迦堂)を作った大工の棟梁(高次)は、
大事な柱の寸法を間違い短く切ってしまいました。
そのことを知った妻のおかめ(阿亀)が枡組を使うようにアドバイスし
高次は無事に本堂建築の大任を果たすことができました。
しかし、おかめは女のアドバイスで棟梁が仕事を完成させたことを知ら
れてはいけないと、本堂の上棟式を待たずに自害してしまいました。
高次は上棟の日、妻おかめの冥福とお堂の無事を祈っておかめの面を
御幣につけて飾ったと言われています。
この話を伝え聞いた人々が、貞淑で才知に長けたおかめ(阿亀)の菩提
を弔うために、大報恩寺の境内に宝篋印塔(おかめ塚)を建てました。
この言い伝えから、大工の信仰を集め今日でも上棟式にはお多福の面を
付けた御幣が飾られるようになりました。

(以上、こちらのサイトより転記)
 
 

この千本釈迦堂(←これは通称。正確には、大報恩寺という)は、ゆるい勾配の杮葺きの屋根が優美な、大変美しいお堂です。
興味のある方は行ってみてください。
観光客も少なくて、なかなかいいですよ。
(建物は大変美しいのですが、庭などはあまり期待しないように)

神戸で建物を解体していておかめが出るとは思っていなかったので、ちょっとビックリしました。

京都以外の地域でも、御幣には普通におかめの面をつけるのかな?
どなたかご存知でしたらおしえてください。

「うちの地域でも付けてるよ」
「この辺じゃああまり聞かないなぁ」
とか教えてもらえると嬉しく思います。 

アメリカの郊外住宅

僕の高校時代の親友がアメリカで歯科医として活躍しているのですが、彼が今、家を建てているとメールで知らせてくれました。

本人の許可を得ているので、ちょっとご紹介したいと思います。

ハウスin philly

彼が建てている場所はペンシルバニア州内の郊外です。
他にも何点か写真を送ってくれたのですが、構造は2×4の木造でした。

上の写真はダイニングとなる部屋から外の景色を見た時の写真だそうです。

この場所はもともとクリスマスツリー用のモミの木を育てる畑だったそうですから、目の前に広がっている針葉樹もおそらくモミの木でしょう。
(写真ではちょっとわかりにくいですが・・・)

僕も以前工務店に勤務していた時にアメリカ国内(しかもたまたま同じペンシルバニア州内)で現場をやっていた時に、郊外に住まわれている現地邦人の方のお宅へ招かれてお邪魔したことがあるのですが、そのお宅でもこのように雄大な森林が目の前に広がっていました。

もちろん、所得はそれなりに高い方のお宅だったのですが、
「どこまでがお宅の敷地で、どこからがお隣の敷地なんですか?」
と尋ねたところ、
「敷地境界なんてどこかわからない(=見えない)よ」
と言われたのを聞いてビックリしたのを強く覚えています。

その後そのお宅の総工費を聞いて、日本の相場と比べてかなり安かったのにはさらに驚きました。

「アメリカの住宅事情はなんて恵まれているんだろう・・・」
とビックリしたものです。
というか、日本の住宅が高すぎるのかもしれませんね。

僕は海外で定住したことがないので、他国の事情と比べて日本の住宅価格がどれほど高いのか(はたまた安いのか)はよくわかりませんが、でも眼前にこんな風景が広がっている土地で暮らせるのはとても豊かなことだなぁと親友をうらやましく思います。

彼も現在進行中のこの家づくりを大変楽しんでいるようです。
この家が出来上がったら、いつか遊びに行ってみたいなぁ。

僕も最近は、眼前にきれいな海が広がる古民家を探して、自分で手を入れて移住したいなぁと夢見ているのですが、実現するのはいつになることやら・・・。

日本の場合は、土地や不動産物件との出会いというのは縁とかタイミングみたいなところが多分にありますから、うちのクライアントのみなさまも苦労されているのはやはり土地探しのようです。

予算内で気に入った土地がなかなか見つからず苦労している・・・という方は多いですね。

僕みたいに自営業の身だと、勤務先の制約がないから
「田舎の方へ引っ越しちゃおうかな~」
なんて割と気軽に(しかも割と本気で)考えられたりするのですが、お勤めの方はそういうわけにはいかないですよね。

でも仕事も含めて、住環境を思い切って変えるというのは、やってみるとさほどとんでもないことでもなくて、本人の意識一つで決まると僕は思うのですが、どうですか?
(↑こんなことを書くと、おまえはそういう仕事をしているから言えるんだ!などとお叱りを受けそうですが)

現在土地探しをされているみなさま、がんばってください。
「良い土地が見つかったんだけど、買おうかどうしようか・・・」
と迷われている方は、最終決断をされる前に、ぜひお近くの工務店や建築家に相談して下さいね。

買ってから
「えっ!この土地ってこういう建物建てられないの?」
とか、
「ちょっと道路が狭いからって、そんなに建築費用がかさむなんて思ってもみなかった・・・。」
と後悔することになっては困りますからね。