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案ずるより産むが易し

今週月曜日に、久々に起り(むくり)を決定するための原寸図を描きました。

起りというのは、屋根面につける微妙な曲がりです。
関西地方では昔から屋根の垂木(たるき)を少~しだけ山なりになるように微妙なカーブで曲げて施工することで、建物の表情を柔らかくします。

下の写真は兵庫県伊丹市内にある旧岡田家・石橋家という文化財の屋根の写真です。
起りがわかるようにと思って撮影してみました。
画像をクリックして拡大表示してみていただくと、起っているのが良くわかると思います。

起り


 



 


 


 


 





お寺などでは逆に凹んだ形の反り(そり・てりと言います)をつけます。



先日もブログで紹介したように、うちでは原寸(1/1=実物大)の図面をしょっちゅう描くのですが、屋根の垂木の起りを決定するための原寸図はまたちょっと別です。

なにせこれだけは、本当に屋根と同じ大きさの絵を描かなくてはなりませんので、広い土間にベニヤを十数枚敷き並べて、大工さんと一緒になって墨壷を使って描いていきます。

今回は長さ7mの垂木をどれだけ曲げるか?という曲線を決めるための原寸だったので、ベニヤを16枚並べて4m×8mくらいの大きなキャンバスをまずつくり、そこに実際の建物の屋根と同じ大きさで小屋組みの略図を描いていき、木材をぎゅーっと曲げて曲線を出し、実際に建った時の起りの見え具合を確認しながら決定しました。



今回の屋根では120mm×60mm という通常の倍くらいの太さの垂木を使うので、曲がり具合(=美観)を確認するという本来の目的以外に、この太さの垂木がホンマに曲がるんか?というところを確認することも大きな目的でした。

僕も大工も、実際に垂木を曲げてみるまでは
「絶対曲がらんやろ・・・」
とあきらめていました。

なにしろ、真っ直ぐな材料を曲げるのではなく、逆反りした木を無理やり反対に曲げるのですから。

でも、実際やってみなくては判りません。
長さ8000mm×120mm×60mmの垂木(樹種:杉)を車長3.5mの軽トラックの荷台に載せて運び(←さすがに公道は走っていません。製材所の敷地内のみです)、先術の原寸を描いた場所でギューっと押さえつけて曲げてみました。

なんと!実際やってみると、曲がります。
「おお~っ!」
とビックリしました。

やはり、
「案ずるより産むが易し」
です。

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7/7(土)に神戸市北区で構造見学会を開催します

下記の日程で、現在神戸市北区で建築中の家の構造見学会を開催します。

【開催日】 2007/07/07(土) ←七夕の日
【 時間 】  11:00~14:00

今回の見学会は、この現場の施工を引き受けてくださっている、大阪の輝建設株式会社さんとの共催です。

構造材には高知県梼原(ゆすはら)町産のFSC認証材を使っています。
とにかく何から何まで、杉、杉、杉・・・の家です(土台と大引のみ桧)。
野地板(屋根下地の板)も当然ムクの杉板を使いました。
写真のように垂木や母屋・桁などの小屋組材もやっぱり杉で化粧で見せます。
まだ張っていませんが、床板も吉野産の杉です。

この家はかなり変則的な作り方をしています。

他人に説明するときには、「総2階平屋建てみたいな家」と僕は言っていますが、2階には納戸以外の部屋がありません。
階段もありません(はしごのみ)。
基本的には平屋の形をしている、30坪(=60帖)ワンルームのような家です。

でも上記の写真のように、2層分吹き抜けの空間を大黒柱が貫いていて、室内からは小屋組みや野地板・垂木などが丸見えです。
(もちろん断熱材はその上にちゃんと入れてありますが・・・)

これで暖房は薪ストーブのみ、冷房なし(まぁ冷房は不要でしょう)、窓は全て木製建具という、何とも勇気のある素晴らしく割り切りのいい家です(笑)。

それもこれも、クライアントであるSさんご夫妻の生活スタイルや人生観を表現していった結果ですが、家というのは建築主の考え方が如実に現れるものです。

いろんなクライアントのみなさまと一緒に家作りをさせていただいていて、それは本当に強く感じます。
何せ、設計をしているのは僕であっても、毎回出来上がってくる家が全然ちがうんですからね。

構造見学会へのお申し込みは、こちら(※)よりお願いいたします。

※ 当方ホームページ問い合わせフォーム:別ウィンドウが開きます

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