テーブルの天板

今週の初めに、三田の西本製材所さんへ行き、テーブルの天板用の幅広板を製材してもらいました。

このテーブルは、うちのスタッフが友人から依頼を受けたものですが、一般市場で買うと1枚板はちょっと無理!という価格だったのでした。

そこでいつも頼りになる西本専務が
「よっしゃ、何とかしたろ!」
と一肌脱いで下さって、何年も前からストックしてカラカラに乾いている大きな板を出してくれました。

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長さは2mですが、幅は86~90cmある大きな板です。
皮付きの板をクライアントが希望されたので、板幅は場所によって異なります。

樹種は米松で、木目もおとなしく、節も小さなものが4つしかないきれいな板でした。

東風では建築を作るときに、極力外国産材を使わないようにしています(※)が、それは外国産材が悪くて国産材が良いから、という理由ではありません。

外国産材にも、質の良い木材はいっぱいあります。

10年以上前までは、僕もよく外国産の木材を使っていたので、それは身に染みてよく知っています。
むしろ外国産材を探して使った方が、安くて良いものが手に入る、と言っても過言ではありません。
( ↑ 最近は国産材の価格が下落しているので、そうとも言い切れませんが・・・)

以前もこのことは何度か書いているのですが、東風で国産材を使う理由としては下記のとおりです。

1. 外国産材は伐採時期や葉枯らし期間などを自分でコントロールできない
  ( ↑ 納得のいく木材をつくることができない)
2. 国産材を使うことで、日本の林業家を応援し、林産地の活性化に寄与したい
3. 日本の林業を応援すれば、山が保全され、間接的に治水に貢献できる
4. そして何よりも、日本の木でつくる日本の建築が好きだから

東風は決して国粋主義的な考え方に基づいているわけではありませんし、盲目的に国産材だけを使っている訳でもありません。

外国産材の良さも充分に認めた上で、それでも国産材を使う意味があると考えて行動しています。

外国産材を毛嫌いする方を見かけることもありますが、外国産材も良いものがあるんだよということも広くみなさまに知って頂きたいなと思います。

(※) 東風では構造材や造作材には決して外国産材を使いません。
   下地材には一部外国産材を使うこともありますが、下地材も極力国産材を使うようにしています。

伝統的な木造建築物における床構面の変形実験

2011/8/2(火)に大阪大学で【伝統工法 床構面の面内せん断試験】が行われ、見学に行ってきました。

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上の写真は試験中の状態で、四角いフレームの上から厚み約3cmの杉板を釘で打ちつけたものをタテに起こし、横から力を加えて変形させたものです。

緑色の点線と黄色の矢印は僕が書き加えた線です。
杉板を張ったフレーム(緑点線枠内)が頭頂部で黄色→方向に引っ張られているため、平行四辺形に変形しています。

 

杉板は2階床板として床梁に直接とめられているものを想定して作られています。

この実験では、建物の床の部分が水平地震力を受けた時に、
【どのくらいの力で-どのくらい変形するのか】
という変形度合いと力の関係を調べることが目的です。

床を調べる実験なのに、試験体が垂直に起きているから、ちょっとピンと来ないですね。

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フレーム変形後の杉板端部の拡大写真です。
各杉板は長さ90mmの鉄釘で打ち付けられています。
水平方向に加力されているので、フレーム全体が平行四辺形のように変形し、杉板が1枚ずつずれている様子がわかります。

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変形後に板を横からみたところです。
所々、釘の頭が抜けてきて浮いています。

 

これは3ヵ年計画で進められている、「伝統的工法を用いた木造建築物の設計法確立」のために、木造軸組みの物理的データを集める目的の一環で行われた実験です。

実際にこういう実験を見ると、いろんなことが判ったり、感じられたりして、とても興味深いです

8/8には京都大学でまた別の実験が行われることになっており、それも見学してきます。
次は通し柱の効果を調べる変形実験です。

 

 

木造建築 東風(こち)の伝統構法石場建ての家づくりサイトはこちら
→ http://www.mokuzo-architect.jp/

(株)木造建築東風のサイトはこちら
世界に、300年先も美しい風景を

美味しかった!

このところ、週末はほとんど打合せが重なっています。

例年、ここまで週末に打ち合わせが集中することはあまりなくて、平日のお客様が4割、週末のお客様が6割、といった具合で適度に分散していたのですが、今年はなぜかみなさま週末の打合せを希望されています。

土曜日も尼崎と京都で打合せがあったのですが、京都のU様宅へ伺った際、ご主人がお作りになったという、自家製のジンジャーエールをご馳走になりました。

ジンジャーエールって作れるんですね!
そんな発想、全くありませんでした。
そしてこれがまたすごく美味しかったんです。

写真、撮っとけば良かった・・・と思ったのですが後の祭りでした。
U様、ごちそうさまでした。

東風でもオリジナルドリンク(もちろん非売品)の製作構想を練ってみようか・・・などと思ってみたりしましたが、さてどうなることやら。

平安前期時代の建築/室生寺

7/17(日)に、奈良県の室生寺へ行ってきました。

学芸出版社が主催している連続セミナー
【 ここが見どころ!古建築/第4回 平安前期時代の建築~室生寺 】
に参加するためです。

講師は古建築の解説においては大変定評のある、妻木靖延先生です。

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当日は真夏の日照りがジリジリ・・・と大変な暑さでしたが、木々が生い茂る室生寺は木陰に入るといくぶん過ごしやすかったです。

もみじの葉の緑がきれいでした。

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石段を登っていってまず説明を受けたのが、金堂。
平安前期の建立(859~876)で、国宝です。

写真手前に映っている、屋根が一段下がっている(縋る/すがるといいます)部分は江戸時代に増築されたものだそうです。
江戸時代とは言え、当時でも約1000年前の国宝級の建物を

「増築しちゃおう ♪」 ← こんなに軽い雰囲気ではなかっただろうと思いますが

と踏み切ったことに、僕はとってもビックリしました。

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金堂の後、弥勒堂(重文)や灌頂(かんちょう)堂(国宝)を見学し、さらに登ると五重塔が見えてきます。

五重塔は平安前期(8世紀末)の建立とされているそうですが、正確な記録はないのだそうです。

しかし、細部のデザインや構法などから推測すると、どうみても平安前期の建物だろうということになっているのだと妻木先生が説明して下さいました。

この五重塔はとても小ぶりです。

京都の東寺・奈良の法隆寺・浅草の浅草寺などにある五重塔と比べると、と~っても小さいです。
外部にある五重塔としては日本で一番小さいものだとか。

当日、参加者のみなさんが口を揃えて仰っていましたが、軒先の裏甲(うらご)と軒付(のきづけ)の部分を白く塗っているのが、デザイン的にとても効いていました。

今は観られませんが、妻木先生が初めて室生寺を観に行った昭和28年には、夜中でも自由に境内に入れたそうで、ちょうど月がとても明るい夜だったので、軒先の白い部分が鈍く光り輝いてなんとも言えず美しかったとのこと。

一度観てみたいなぁ。

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室生寺の一番高いところにあるのが御影堂です。
鎌倉時代後期の建立で、重要文化財に指定されています。

この建物、屋根がとても珍しいものです。
どこが珍しいのかわかりますか?
(画像をクリックすると拡大表示できますが、それでもわからないかもしれません)

正解は ↓

 

それでは正解です。

なんとこの屋根、瓦葺のように見えますが、実は屋根葺き材が木なのだそうです。
使われているのは槙(まき←おそらく高野槙)の木で、厚みは7cmあるとのこと。

伊勢神宮にも厚板葺きの建物がありましたが、ここの御影堂のように瓦の形をした厚板葺きを観たのは初めてです。

槙は木製の浴槽に使われる材としては最高のもので、桧よりも香りが柔らかくて上品で、濡れたり乾いたりする環境においては抜群の耐久性を持った木です。 

今は大きな槙の木が大変少なくなり、入手が大変難しくなっています。

妻木先生の講義は大変素晴らしく、また次回もぜひ参加したいと思っています。

やはり古典に学ぶということは原点ですね。
関西に暮らしていると、このように貴重な古建築をすぐに観に行けるというのは大変恵まれたことですね。

いつかこうなってほしいなぁ

きょうは珍しく、ちょっと批判めいたことを書いてみます。

先月、所用で京都府庁へ行った時のことです。

用事を済ませて帰ろうとしたところ、エレベーターホールから京都市街が見渡せるようになっていました。

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日本を代表する観光都市・京都の景観がこれではちょっとなぁ・・・と悲しくなりました。
第2次世界大戦の時、アメリカ空軍が京都・奈良への空爆を避けたということなのに、その景観を壊してしまったのは日本人だったなんて、お粗末な話ですね。

下はイタリア・ヴェニスの市街地を見下ろした写真です。

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まぁ上の写真はヨーロッパですから、日本と景観は全く異なりますが、同じアジアでも中国の麗江ではこんな素晴らしい景観が遺されています。

たとえ数百年かかっても良いから、京都もこうなってほしいなぁ。

都市の住みやすさとは

今朝、インターネットのニュースを見て、ちょっと意外で驚いたことがありました。

世界で最も住みやすい都市ランキングで、カナダのバンクーバーが5年連続で1位

(中略)アジアの最高位は大阪の12位で、東京は18位。

僕はバンクーバーへは行ったことが無いし、上位を占めた都市の中で行ったことがあるのは唯一トロント(カナダ)くらいなのでコメントするに値する資格を持っているとは思いません。
トロントは緑が豊かで静かな街だったという印象があります。

何よりも驚いたのは、大阪が12位だったこと。
僕も大阪は大好きですが、【住みやすい都市】として挙げるのならばもっと他にあるんじゃないの?という気がしました。
僕が個人的に日本の中で挙げるのならば、札幌です。
水が美味しくて、自然が豊かで、物価が安く、気候も割と穏やかです。
でもきっと札幌は世界140都市の中に含まれていないんだろうなぁ・・・。

関連でこのページの一番下の方を見ていたら、またまたビックリ!
レストラン格付けだと、世界第5位のニューヨークや4位のパリを抑え込んで、なんと世界1位が東京、2位が京都、3位が大阪と日本がトップ3を独占しちゃってるんですね!

ミシュラン格付けによるものとはいえ、やはり日本の食文化は世界トップレベルだと言うことでしょうか。

あなたにとって都市の住みやすさとは何ですか?

江戸からかみに学ぶ

週末に東京へ行っていました。
土日の2日間にわたり、 江戸からかみについて学ぶセミナー
「復興! 江戸からかみに学ぶ」
に参加してきたのです。

日本民家再生協会の若手メンバー(U-50)が企画・主催し、東京松屋様をはじめとする江戸からかみを今に伝える職方のみなさまにご協力いただいて実現したものです。

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第1部は東京松屋の伴社長様による、江戸からかみの総論とも言うべき解説でした。

まずは江戸からかみの歴史を紐解く話から始まりました。
関東大震災の後の火災と東京大空襲で、江戸に伝わっていた江戸時代の版木(はんぎ)はそのほとんどが消失してしまったそうです。

江戸からかみと京唐紙の違いや、なぜその違いが生まれたのか?など、大変興味深い貴重なお話を伺うことができました。

会場には、実物大の襖の下地工程(全10工程)を説明するための見本を展示してくださっていたのが素晴らしかった。
その10工程にわたる紙貼りにおいては、各工程ごとに異なる紙質・糊のつけ方・紙の切り方など、職方の繊細な心配りがなければ成り立たないことがよく判りました。

僕ら建築家にとっては、今回教えていただいたことをきちんとクライアントのみなさまにわかりやすく伝えることも大切な仕事の一つです。
そうすることで、クライアントのみなさまがからかみの本当の価値を評価し、からかみの仕事を依頼して下されば、職人さんが腕を振るう機会が増えて伝統も継承されていくからです。

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上の写真は、実際に型を捺すための版木です。
この版木の場合は、彫り残してある笹の葉や茎の部分にキラ(雲母)などをつけて、鳥の子(とりのこ)紙に捺します。

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その版木にキラを付けて鳥の子紙に型捺しする作業を、実際に職人さんが実演して見せてくださいました。
写真中央で実演して下さっているのが、からかみ師である唐源(からげん)の小泉幸雄さんです。

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この時使ってくださった小版の版木(↑)は天保年間のもの。

この作業、ビデオに納めたかったです。
(写真はたくさん撮りましたが・・・)

 このお二方へ取材をした記事がこちらのサイトで公開されています。
僕のつたない文章よりも臨場感に溢れていてずっとわかりやすいので、興味のある方はぜひご覧あれ。

放射線以外のがん治療法

昨日、5月の連休明けに竣工・リニューアルオープンした青木診療所様へ行ってきました。
(すみません、まだ写真撮れていません・・・今しばらくお待ち下さい)

リニューアルオープンして以来、青木診療所様では患者さんも増え、患者さんが「診療所内で木のにおいがする」、と好評のようで一安心しています。

僕も今回の工事で初めて知ったのですが、がん治療に患部を温めるだけの温熱療法というのがあるんです。
がん細胞は熱に弱いことは昔から知られていて、科学的にも証明されているのだそうです。
この性質に着目した治療法がハイパーサーミア治療システムなのですが、今回、青木診療所様ではリニューアルにあたりハイパーサーミアの治療器/大型のサーモトロンを導入されました。

放射線治療と違って、患部を高周波で温めるだけというのが安全で、すごい!と感じました。
イメージ図を貼っておきます。

hyperthermia

昨日伺った折に、新しくおつくりになられたという診療所のパンフレットを頂いてきました。

僕は専門外なので、これ以上詳しいことは以下のパンフレットを見て下さい。
ホームページは現在製作途中とのことなので、以下にPDFファイルのリンクを張っておきます。

便利な大阪駅前で検査・診断から緩和医療まで
ハイパーサーミア治療 青木診療所

テレビについて思うこと

先に断っておきますが、僕は基本的にテレビが好きではありません。
1人で住んでいたら、ひょっとするとテレビは家に置かない・・・かもしれません。

僕が小学校5年生の時、担任の先生が
「今日家に帰ってから明日学校に来る間は、みんな絶対にテレビを観ちゃダメだからね。
 たまにはそういう日をつくってみましょう。
 きっと頭の中がすっきりしてきれいになるから」
ということをクラスのみんなに実行させました。

この時から、あまりテレビが好きではなくなったような気がします。
( ↑ 当時の担任・U先生に感謝)

と、そんな個人的なことはどうでもいいのですが、家の設計をしているとテレビの置き場を考えるのに苦労することが多いです。

先日もクライアントのH様宅に伺ってテレビの置き場について考えていてふと思いついたのでH様にはお話ししたのですが、おそらく近い将来、テレビの置き場所について悩まなくても良いようになってくるでしょう。
 
すでに商品化されていますが、壁掛け型テレビやプロジェクターを使えば、テレビの置き場所は不要です。
プロジェクターも以前のものは光源が発する熱がすさまじくて、それを冷却するファンの音もやかましかったのですが、最近のLED光源のプロジェクターにすると、どうやら放熱もさほど問題にならないようです。

しかし現時点では、まだ録画・再生機能がテレビと別体になっているものを使うケースが一般的なので、テレビを置く場所で頭を悩ませることからは、いま少しの間離れられそうにありません。

でも、これから家を建てる方は
「当面の間はテレビをここに置く。
 でも将来はこの壁に掛けるようにする」
という風に、2通りの配置に対応したTVコンセントを備えておくことも考えた方が良いかもしれませんね。

というか、 個人的には
「姿が無いテレビ」
をぜひ開発して欲しい!と思います。

普段は透明の薄いパネルのみがあって、電源を切っている間はその向こうにあるお気に入りの絵が透けて見えるのですが、どうしてもテレビを見る必要に駆られた時だけ、画像が映る。
そんなテレビ、いいなぁ~。 

自分の机の前にかけてある、この絵を見上げて思いつきました。

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出てみたい!

木曜日の夕方は、月に3回茶道の稽古へ行くことになっています。
(とはいえ、1-2回行ければ良いほうですが・・・)
昨日も西宮の稽古場へ行ってきました。

先生といろんな話をしている中で、【朝の茶事】の話になりました。

【朝の茶事】とは、夏の暑さをしのぐために、夏の早朝に席入りして暑くなる前には茶事を終えてしまうという、いかにも夏向きの茶事だそうですが、そこで先生が

「『暁(あかつき)の茶事』っていうのがあるのよ」

と教えて下さいました。

朝の茶事は日が出てから席入りする夏の茶事ですが、暁の茶事は日が出る前の暗い時間に席入りして日の出の変化も楽しむ冬の茶事だそうです。
 
日の出の時間帯が大好きな僕にとっては、
「ぜひとも一度出てみたい!」
と思ってしまう暁の茶事なのですが、実際やろうと思うと、やはりう前の日から泊り込みになるそうです。

そうなってしまうと、前の日にみんなで飲んだくれて茶事の時間に間に合うように起きられないのでは・・・なんて要らぬ心配をしてしまいました。

でも、ぜひ出てみたいなぁ・・・。