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墨付けと i – ro – ha

これまでにも何度かお伝えしていますが、今、兵庫県三田市内で墨付け作業を行っています。

墨付けというのは、構造材を刻む前に、その刻む加工の線を書いたり、通り芯という基準の線を材木に書いたりする作業のことを言います。



一般に木造の世界では、X軸Y軸を
  いろはにほへと・・・
  123456・・・
という番号を打って座標をつくり、各柱や梁などの構造部材の位置を
「【へ】の【1】番」 とか 「【い】の【5】番」 などというように表します。

なぜか、【あいうえお】の順ではなく、【いろはにほへと】、なんですよね。
慣習的に。



ちなみにこれは木造の世界に限ったことで、ビルなど鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物の場合は、【いろはにほへと】 の代わりに 【ABCDEFG】を使うことが多いです。

もうここまでいってしまうと、味わいもへったくれもない、という感じですが(笑)。



そんなわけで僕は、いろはにほへと・・・には割と身近に接する機会が多いのですが、今回墨付けをお願いした大工の西田さんはちょっと違いました。

 いろはにほへと・・・ではなく、
 以呂波耳本へ止・・・なんですよ。

僕には初めてのことだったので、これには最初ちょっと驚きましたが、なかなか味わいがあって良いものですよ。

ちなみに西田さんは40代前半のまだ若い大工さんなので、親方に教わったからそのままのやり方をしているだけだと思います。
別に尋常小学校でそのように習ったから、というのではありません。



下の写真がその墨付けが終わった材料です。

いろは

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

蛇足ですが、【いの1番】というのはこの建築用語が語源のようです。

【い】通りの【1】番にある柱は、建て方の際に一番最初に立てられるケースが多いことから、「何をさしおいても、真っ先に」という意味で使われるようになったとか。

 

 

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墨付けと原寸図

5月下旬の上棟に向けて、京都市N邸の構造材墨付け作業が本格的に始まりました。

昨日は刻む場所に行って、朝から大工さんと一緒にまずは木出し作業を行いました。
木出しとは、それぞれの木の癖や面(つら)を見て、どの位置にどの向きでつかうかを決定していく作業です。

木出し0220

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはこんな風に材料を馬(←木で作った台のこと)の上に並べて、比較・検討できるようにします。
写真に写っているのは、背7.5寸と8寸の杉の梁です。

こうやって並べてみると、木目が上品でおとなしい木、少しひねくれたくせの強い木、色の黒い木などそれぞれにいろんな個性を持った木であることが良くわかります。

各々の木の面以外にも、元末(もとすえ)や背と腹を見て木を使う方向を決め、番付(ばんづけ)を打っていきます。

昨日は胴(=2階床)回りの木材を全て出しました。

 

墨付け

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


墨付け作業を行っている大工の西田さんです。

西田さんは墨付け~刻みの工程が大好きだそうで、今回は墨付け用に墨壷の糸も一段細いものに入れ替え、さしがねを墨付け専用の柔らかい地金のものを持ってきていて、準備は万端です。

これから1ヶ月くらいかけてじっくり墨付けを行い、そこから刻みに入ります。



実はこの墨付け作業に入るまでに、この現場を担当するうちの女性スタッフが昨年の末からずっと原寸図を描いてきました。

今日はそのうちの1枚だけをご紹介します。
(もっともっと大作もあるんですが、大きすぎて読み込めません)
画像をクリックすると拡大表示できます。

原寸図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最近では現場でもほとんど見る機会がなくなった原寸図ですが、この現場の原寸図だけでも彼女は通算100枚以上描いているでしょう。
本当に熱心に、根気よくていねいに描いてくれています。
( ↑ 当然、上記の中には変更でボツになったものや書き損じなどもありますが)

しかし、この図面が命です。
この図面をどこまで書き込むかによって、建物の完成度がまるで違ってきます。

墨付け作業に取り掛かるまでに大方の原寸図を描き終えることができて、ちょっと一安心です。



設計事務所で今だに原寸図を描いているところはと~っても少ないでしょうね。
しかもうちは原寸図だけは絶対に手描きです。
(本当は一般図も手描きの方が良いんですが・・・)

手描きの意味は描いた人にしか判らないと思いますが、この原寸図はコンピューターで描いたのでは絶対にダメです。

別に、スパルタ式にしごくとかイジワルな意味でこんなことをやっているんではないのですが、こんなご時世だと前時代的だとか思われてしまうんでしょうね、きっと(苦笑)。

でも、こうやって作り込まないとできない建物があることを、きちんと次の世代に伝えていくことが僕の使命です。
なんと言われようと曲げません。



 

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大津市T邸 墨付け

ご無沙汰しております m(_ _)m。
西宮の現場も無事竣工し、ようやく一段落着きました。
早いもので今日からもう8月ですね。

見学会へご来場下さった皆様、どうもありがとうございました。
心より御礼申し上げます。

さて、滋賀県大津市内で7月より着工しているT邸の墨付けが進んでいたので、大雨の降った月曜日に、(有)梓工務店の工場へお邪魔してきました。

墨付-1

やはり手書きの番付けは味わいがありますね。
プレカットとはまるで雰囲気が違います。
(画像をクリックすると拡大表示できます)

墨付-2

この写真だけではちょっと判りにくいと思うのですが、墨付けをしてくれた棟梁の墨壷、この墨付けに際して糸を新しい細い糸に替えてくれたのでしょうか、とても線が細く緊張感が漲っているいい墨でした。

やはり手刻みはいいですね。
上棟が楽しみです。

上棟は8月下旬の予定です。
この現場は構造見学会も実施したいと思います。

この現場は木材の緊結にボルトを使わずに、込栓など木だけで構造体を組む栓引き仕事です。
どうぞお楽しみに

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