偽装について思うこと

昨年は食品偽装事件が多かったですね。

先週末にテレビの報道番組で関サバと称して販売していた大手スーパーや回転すし店の商品が関サバではない、ということを突き止めていく取材報道を視ていました。
良いとか悪いとかの批判は他の方にお任せするとして、僕は自分自身の問題に照らし合わせて考えてみたいと思います。



それは木材の生産地偽装ということです。

正~直なところ木材の生産地詐称については、それが仮に行われていたとしても厳密に見破るのはとても無理です。

「一般的な傾向から考えておそらく違うと思われる」
というような曖昧なことは言えても、個体差もあり、山の斜面の向き(東西南北どちらを向いているか)や標高・土壌によって、木材の目(年輪)や色は全く違ったものになります。

それこそ、半径10キロと離れていない2つの生産地間でも、それぞれの産地に標高差が数百メートル(※)もあれば、木材の質は違います。
それだけ微妙なものなのです。

※ 例えば、1つは山の麓の森、もう1つは山の尾根に近い森であれば、平面距離ではお互いにすぐ近くの森であっても、標高差が3~400m発生するのはざらにあることです



故意か否かは別問題として、そういう意味では製品化された木材の質だけから産地詐称を見分けるのは無理な話です。

まぁ国産材か否か?ということを見分けるくらいなら、95%以上の確率でできますけどね。



木材の産地詐称品にお金を払いたくない、という場合は認証林(FSCやSGECなど)の木材であれば、産地・生産者を特定することはできます。

「認証林の木材だけを使って欲しい」
とあなたが建設業者に頼めば、それを実現することはさほど難しくなくなってきました。

でもうちでは認証林制度にあまりこだわっていないので、当面は設計事務所としての認証材サプライヤー(供給者)の資格を取る予定はありません。



今のところ、うちで産地を明確に特定できる木材の供給方法としては、認証材を使う以外に、静岡で作っている新月伐採材があります。
ただし、これは一般の認証材(FSCやSGEC)よりも数段高い履歴作業を行っています。
(というか、実はこの木は全てSGEC認証材なんですけどね)

なにしろ、一本一本に伐採時に個別ナンバリング(番号付け)を行い、生産者・生産地だけでなく、どの山のどの斜面の木か?そしていつ伐った木かという伐採年月日まで分かるようにしているからです。
そしてこの材に関しては、伐採時に新月の木国際協会の認証を受けています。

下の写真を見ていただければ分かると思いますが、伐ったらすぐに木と切り株の両方に1本ずつ固有の番号を振っています。
(画像をクリックしていただければ、拡大表示されてよくわかると思います)

新月材のナンバリング


 


 


 


 


 


 






しかし、僕にとってこの作業の目的は詐称を防ぐためではありません。
新月期という、木材にとって良い伐採時期を選んで伐っているということをきちんとクライアントに伝えるためです。

そして可能であれば、伐採時にエンドユーザーであるクライアントに静岡まで行っていただき、クライアントご自身に伐採現場に立ち会っていただく、という作業をお奨めしています。

2007年11月に行った伐採でも、京都からわざわざクライアントのNさんご夫妻に静岡まで来ていただきました。
Nさんには、木が生きているんだということを実感していただけたようで、林業家(生産者)と会話を交わすことなどを含めて、消費者・生産者双方にとって貴重な機会を提供しています。



詐称かどうか?ということに目くじらを立てるのは、消費者利益を考えれば確かに必要なことだと思いますが、ただそれだけのこと(意味・価値)にエネルギーを浪費するのは少し寂しい気がしますね。
もう少し別の、もっと深くて大切な価値があると思うんですが・・・。

そんなことをテレビを見ながら考えました。



2007年11月の新月期に伐ったこの木材は、現在静岡で葉枯らし乾燥中です。

3月中旬までこのまま葉枯らし乾燥を行い、現場ごとの必要な長さの木材に伐ってから製材にまわし、その後自然乾燥させてから刻みます。

この材に関しては、絶対に人工乾燥やプレカットは受け付けません。
なぜなら、それだけ自信を持っているサービス・商品だからです。



現在、あと1棟分だけこの木材の使用枠があります。
興味をお持ちの方は、お手数ですがまずこちらのページをお読みになってからお問い合わせ下さいね。

できれば、玉切り(3月)・製材(4月)作業にも立ち会っていただいた方がより深い満足感が得られると思うので、お申込はお早めに。

(株)木造建築東風のサイトはこちら
世界に、300年先も美しい風景を

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