むくり屋根-後編

前回に引き続き、むくり屋根のことを書いてみます。

前回は大工さんによる木下地ができるまでをご紹介しました。
木下地が完成したら、次は瓦屋さんの工事に移ります。

まずは防水層の設置(下葺き)工事です。

rolltonton

上の写真は瓦の下の防水層となる、ロールトントンを葺いたところです。
ロールトントンは杉を薄~く削った板を縫い合わせたもので、一般的に
よく使われているアスファルトルーフィングなどよりも通気性に優れているので
小屋裏での結露防止のためにはこの方が有利です。

軒先は角度が一旦折れてしまったりすることから、ルーフィングで
部分補強しています。

mukuri1

瓦を葺き終えた後、棟付近に登って下を見下ろして見たところです。
結構むくりが付いて屋根が全体に丸みを帯びている様子がお分かりに
なっていただけると思います。

ケラバ瓦と破風を棟付近から見下ろしたのが下の写真です。 

mukuri2

下の画像はちょうど春の嵐が来た翌日に撮った写真です。

足場のシートが風をはらまないようにと、ネットシートをたたんだので
この時は建物の姿がよく見えました。
(今はまたネットシートで覆われていて、これほどよく見えません)

hhouse_outside

H様邸の外観は、最終的には木製の面格子がついて杉板張りと
漆喰仕上になるので、町家のようなイメージになります。

 あなたはどちらが好きですか?
 30年後に「そろそろ建て替えようか・・・」と言われる家と
「200年前のおじいちゃんが建てたの」と2212年に言ってもらえる家 

むくり屋根 前編

先月の工事内容ですが、尼崎市H様邸・屋根の工事についてご紹介します。

H様からは
「屋根にはむくりをつけて下さい」
というご希望を伺っていました。

お客様から屋根にむくりをつけて欲しい、と希望されるケースは珍しいです。

ほとんどの場合、ご予算や建物の全体イメージ・屋根葺き材などの事情を
考慮して、むくりをつけるかつけないかをこちらで判断・ご提案する、という
流れが一般的です。

ですから今回のH様のお宅の場合は、建物のプランや屋根の形なども
【むくりがきれいに見えるように】ということを最初から強く意識して設計しました。

棟の位置・建物全体の軒の高さ、下屋の流れ長さや大黒柱の位置まで
【屋根をきれいに見せたい】ということを意識してつくり始めると、いろんな
事柄をそれにむけて統一していく作業が必要になります。

実は東風で建物をつくる上で、最重要なデザイン要素が屋根です。

  屋根をどう見せるか?
  どんな高さにするか?
  棟の位置=大黒柱の位置→構造の組み方は? 
  軒の深さやケラバの出は?
  垂木の寸法や面取りの大きさ、垂木の間隔は?
  ケラバの納まりと軒先の見せ方は?

屋根のデザインを決定する上では、上記のような様々な要素が
絡んできます。

こと屋根に関しては、おそらく
「東風さんはちょっと異常なんじゃないか?」
と思われるくらい、こだわっています(苦笑)。

でも、それだけ重要なんです。

屋根がきれいに見せられたら、もうそれだけで建物のデザインの
半分以上は成功したようなものです。

逆に、屋根がきれいに見せられなければ全てが台無しになります。

ですから、屋根の納め方については現場ごとにかなり頭を悩ませますし、
今現在も別物件の屋根の納まりで頭を悩ませている真っ最中です。

さて、前置きが長くなってしまいました。
そろそろ写真をお見せしますね。

まずは屋根に垂木(たるき)を流します。

東風では垂木にも杉を使うことが多いです。
今回は大屋根の垂木と下屋の垂木、どちらも静岡の杉を
使っているのですが、大屋根の杉と下屋の杉は全く違う材料の
採り方をしています

taruki

これは大屋根の垂木の写真ですが、大屋根では芯持ち節有りの杉を使い、
下屋では芯去り・無節の杉を使っています。

そして、もちろん双方の太さも変えています。
大屋根は遠く離れて見えますから少し太く。
下屋は目の前すぐ近くで見えますから、野暮ったくならないように少し細めにします。

垂木を流したら、その上に化粧野地板を張っていきます。

nojiita

化粧野地板を張り終えたら、その上にもう一度野垂木を流して
垂木-垂木の間に断熱材を充填します。

yaneshitaji

上の写真右半分はすでに断熱材(グレー色)の充填を終えて、
上から野野地を張っているところです。

左半分はまだ断熱材が入っておらず、野垂木が見えている状態。

hahu3

屋根のむくり曲線に合わせて破風を造り出して取り付け、
木下地は完成です。

屋根がゆるやかに弧を描いている(=むくりがついている)様子が
お分かりになっていただけると思います。

明日は瓦工事について書いてみます。

桧の床板と杉の床板を張ってます

尼崎市H様邸では床張り作業の真っ最中です。

今回使う床板の厚みは40mm.
実(さね)の部分は雇い実(やといさね)にして大工さんに加工をお願いしました。

hinoki_floor2

上の写真は、1階のリビングと玄関に張る桧の床板の加工作業中に写したものです。

hinoki_floor3

樹齢100~120年の大きな桧から製材した板なので、一番広いものでは巾が240mmもあります。
実物を見ると、住宅用の床板というよりはお寺なんかで使うための板なんじゃないの?っていう印象を受けます。

2階は杉の板を張っています(↓)。 

2f_floor1

大工さんが丁寧に張ってくれていて、大黒柱(桧・八寸角)と床板の取り合い部(↓)などをみても、ビシッとくっついていて一分の隙も無いのは見ていて気持ちが良いです。

2f_floor2

こういうのってすごく嬉しくて、見ているとにんまりしてしまいます(笑)。

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京都市U様邸新築工事 墨付けが始まりました

京都市左京区内で初夏に上棟予定のU様邸。

今週月曜日から大工による墨付け作業が始まりました。

kyoto_structure

構造材は静岡で新月期に伐採・葉枯らし乾燥後、3年寝かして天然乾燥させた、東風特製の杉・桧です。
樹齢100~130年、目がよく詰んだ北向き斜面に生えていた素直な木ばかりです。
原木を提供してくれたのは、静岡の鈴木林業さん。

修正挽きは静岡の杉山製材所さんにて行った後、プレナー加工をしてもらい、上の写真に写っているような感じで加工場に届きました。

3月末には、クライアントのU様ご家族がみなさまでわざわざ静岡まで足を運んで下さり、伐採現場を見学したり、製材所・林業家の方々と言葉を交わされました。
(U様、杉山さん、鈴木さん、その節は大変お世話になり、ありがとうございました)

kyoto_sumituke0417

今回木工事をお願いしたのは、以前もうちの工事を手がけてくれた京都の大工さんです。

上棟は6月、竣工は10月末の予定で、プレカットではなく全て手刻みで仕上げる現場なので、手際よく進めなければなりません 。

この大工さん達はいつも非常にいい仕事をしてくれるので、今から仕上がりがとても楽しみです。
また経過をご報告しますのでどうぞお楽しみに。

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淡路市 T様邸古民家改修工事の杉

ながらく更新が滞っておりました。
すみません。
相変わらず毎日あちこち走り回っていて椅子の温まる暇が無いのですが、何とかブログを更新していきたいと思っております。
これまではfacebookも読者専門でしたが、もうちょっと勉強してfacebookも更新していかねばなりませんね。
(でも、facebookはどう活用すべきメディアなのか?というところが
今ひとつ ピンときていません・・・)

ブログを更新していなかった間も、着々と現場は進んでおります。
(そしてもちろん、僕も現場を渡り歩いております)

淡路市のT様邸改修工事は、大工さんが1人でゆっくりコツコツと進めてきてくださっているので、かなりスローペースです。
2月に着工したのですが、4月に入ってようやく床を張り始めたところ。

awaji_flooring

上の写真は来客用の部屋の
床板です。 
厚み35mmの本実加工した杉板張り仕上げです。

工事契約の時には、【特一等材】という節がいっぱいあるグレードの
並材で見積されていたのですが、たまたま材料屋さんが無節の板を
入れてくれた(工務店さん談)とのことで、とてもきれいな板が張られています。

圧巻だったのが、2階の柱です。
契約時には杉の源平・小節程度でいいですよ、という設定だったのですが
実際に現場へ届いたのが吉野産赤杉の3方無地の柱たち。

awaji_yoshinosugipost

工務店さん、こんないい材料入れたら大赤字とちゃいますか?
と心配になるほど素晴らしい柱でした。 
T様宅の現場には、2階にこんな柱が林立しています。

杉が大好きな僕としては、とっても嬉しい限りですが
クライアントのT様ご夫妻も大喜びでした。

3/18(日)に尼崎市内で構造見学会を開催します

amagasaki_structure

昨年秋から刻みに着手していた物件が、兵庫県尼崎市内で2月中旬に上棟し、クライアント・H様の厚意により、工事中の構造見学会を開催させて頂けることになりました。

丁寧な手仕事による美しい仕上がりの魅力を多くの皆様に体感して頂きたいと思い、H様に開催を打診したところ、「どうぞ、どうぞ」と快諾のお返事。
現場所在地は兵庫県尼崎市内です。

大黒柱は8寸角/樹齢130年の桧、通し柱は5寸角の桧と杉を使い、管柱は3.8寸角の杉で、全て樹齢が100年超の大径木を2008年晩秋の新月期に静岡で伐採した木材。もちろん全て天然乾燥材です
30代前半の若い棟梁が頭に立って4ヶ月かけて刻み、構造材の緊結には金物を用いずに、長ホゾと栓で納めています。

工事中の現場での見学会開催で足元が悪いこともあり、一度にたくさんのご来場者がおいで頂いて混乱することがないように、時間帯ごとにご予約を承って対応させて頂きます。お申込の際には、見学ご希望時間帯をお申し出下さい。
(お子様をお連れ頂いても大丈夫です)

久々の見学会開催です。
皆様のご来場をお待ちしております。

お申込は木造建築 東風のホームページからお願いします。

2012伐採

先日、和歌山へ行ってきました。
伐採を依頼した杉の木を見に行くためです。

本当はその日に見に行く予定ではなかったのですが、当日の朝、雨が降っていたことから現場作業が延期になり、全ての都合がピタピタと合ってきました。
(というか、数週間前から林業家に「行きます、行きます」と言っていたのに、なんやかんやで行けずじまいだったのです)

そこで急遽
「今日しかない、今から行くぞ!」
ということになり、事務所スタッフ総出で和歌山へ。

現場は和歌山県田辺市の山深い北斜面で、とても良い杉が林立していました。
樹齢は100年ちょっと超えたあたりの人工林です。

wakayama0207_1

立ち木を見てみて、あまりに良い木なのでビックリして

「いやぁ~、いい木ですねぇ~」

と僕達が言うと、吉野で長年林業を営んでこられた福本林業の福本さんも

「ここの木はいい木ですよ。
 ひょっとしたら吉野の木よりも良いかもしれん」

と仰っていました。

東風の天然乾燥材ストックは、この春に使う予定の材料がたくさんあってかなりはけてしまうので、ストックを補充しておかなければなりません。

なにせ伐って使えるのは最短でも1年後、できれば2年後以降(2014~)ですから、伐り旬が終わってしまう今のうちに伐っておかなければなりません。

今月末までに伐採を行う予定です。
製材が楽しみです。

wakayama0207_2

尼崎で基礎工事が進行中です

兵庫県尼崎市内で新築住宅の基礎工事が進行中。
下の写真は、土間のベースコンクリートを打設した直後の写真です。

ama_kiso

このベースコンクリートを打設したときは、ちょうど最強寒波が来ていたときでした。

コンクリートが寒さで凍ったりしてしまっては大変なので、コンクリートに使うセメントを普通セメントから早強セメントにしたり、強度を2段階上げたり(←これを温度補正といいます)、コンクリート打設後は温度が下がりすぎないようにブルーシートで覆ったり、といろいろ手を尽くしました。

コンクリートという無機質な材料も
「ジャバジャバと流し込んでしまえば、あとはほったらかしでオッケー♪」
というような乱暴なものではなく、実はなかなかデリケートです。
( ↑ 今の時節柄だから・・・という事情もありますが)

また明日から寒くなるようなので、気をつけておかなければ、と思っているところです。

今日は立春、東風になって3年経ちました

今日は立春です。

立春とは冬至と春分のちょうど真ん中にあたるそうのだですね。
(知らなかった・・・)

2009年の立春に、木造建築 東風と現在の名称に変更してから、今日で丸3年。
これから4年目に入ります。

みなさまの暖かいご支援・応援のおかげで、何とか事務所が運営できていることは、本当にありがたいことです。
日頃のご愛顧に対し、心より御礼申し上げます。

さて実は、一昨年の秋よりのらりくらりと進めてきた東風ホームページのリニューアルが一段落し、公開しても概ね問題ないレベルになりましたので、今朝新旧ホームページの交代を行いました。

未完成な部分が少し残っているのですが、もしご興味があれば覗いてみて頂けると嬉しく思います。

新しいサイトのコンセプトは、
「パッと見てわかりやすく」
ということを軸に作ってみました。

○ 東風ってどんな特色があるの?
○ どこにこだわってるの?

というところも、直感的に伝わるのではないかと思います。

これまでのサイトに比べると、テキストの情報量はかなり減らして、画像を増やしています。
ご意見・ご感想などありましたら、送って頂けるととても嬉しく思います。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

木造建築 東風の新しいサイトはこちら(↓)
 http://www.mokuzo-architect.jp/

初釜 2012

本年の初投稿です。

旧年中はみなさまこのブログを見に来て下さり、本当にありがとうございました。
2004年12月から始めたこのブログも、ついに8年目に突入しました。

実は2年越しの課題・ホームページの全面モデルチェンジに取り組んでいることもあって 、このところすっかり更新ペースが落ちていますが、ボチボチいきます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨日は茶道の稽古場の初釜でした。
僕が習いに行っている稽古場では、毎年初年度1回目の稽古のときに、初釜として少し簡略化した茶事が催されます。

hatsugama_tokokazari

↑ 床飾り

hatsugama_temaeza

↑ 長板を使った点前座の構え

hatsugama_tenshin

↑ 点心

この点心がと~っても美味しかったです。

稽古場の先生と弟子のみなさんで作って下さったのですが、
「これ、料亭で出せるんじゃないですか?」
というほどおいしかったです。

写真を撮っていないのですが、この点心の後で濃茶・薄茶を頂きました。 
昨年は稽古も休みがちだったのですが、今年はもう少し頑張って行ける回数を増やしたいと思っています。 

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