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再読

安藤忠夫の本


 


 


 


 


 


年末年始に本を数冊読みました。
一番面白かったのは、東野圭吾の『手紙』だったのですが、
それはまた後日改めて書評を書くことにします。

今日はその中の1冊、安藤忠雄氏の『連戦連敗』について。



この本は2001年に発刊された本で、発売当時にすぐ買いました。
しかし、なんと絶妙なタイトルなんだろう・・・とつくづく感心します。

だって、安藤忠雄が『連戦連敗』ですよ?
そんなの、誰が見たって
「なんで?」
って思いませんか?

いやぁ、商売うまいなぁ、と感心しますね。
(↑感心するところがちゃうやろ!)

でも、内容を読むと、確かに・・・と納得しますが。



この本、僕は非常にいい本だと思います。
今回は再々読(つまり3回目)なのですが、学ぶ部分はいろいろありました。



実は、安藤さんのことをあまり良く言わない人は建築業界でも多いです。
でも僕は、彼を非常に高く評価しています。

彼の一般的な経歴を見ると、「独学で建築を学び・・・」といつも書かれていますが、実は彼は故・西澤文隆さんという建築家に付き添って日本の古建築をひたすら見学・実測していたそうです。
(↑当時同行していたという、僕の知人・Nさんから聴きました)

西澤さんという人は、主に現代建築を手がけられていましたが、木造建築にもものすごく造詣の深い方で、僕も一度でいいからお会いしてみたかった人です。
(↑実はうちの事務所のすぐ近所に、西澤さんの自邸があります。
  西澤さんは伊丹市民でしたから)



安藤さんの手法や考え方、寸法の使い方を見ると、古典に学んだ痕跡がよく現れています。

確かに、安藤さんの手がけた木造建築は、ちょっと・・・と思いますが(笑)、本質的に建築を捉える姿勢においては、当代随一ではないかと僕は勝手に思っています。

この本を読むと、安藤さんのバックボーンや考え方がよくわかり、興味深いです。
そして、これから自分が読むべき本や、見なくてはいけない建築のことなどもこの本はいろいろと教えてくれます。

もっと勉強しないと。

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世界に、300年先も美しい風景を

昔の人が建築に込めた思い~金沢・成巽閣にて

この週末、金沢へ行ってきました。

 

NPO法人・日本民家再生リサイクル協会主催の、民家フォーラム2005に参加するためです。

いろいろと感じることが多かったので何回かに分けて金沢でのことをご報告するつもりですが、とりあえず今日は、金沢に着いてまず一番に訪れた成巽閣(せいそんかく)という建物を見学した際に感じたことについて書いてみます。

 

 

成巽閣は1863年(江戸時代末期)に加賀藩・前田家13代当主が、彼の母12代奥方のために建てた奥方御殿です。

成巽閣では、現地の学芸員の方に解説をお願いしたおかげで、じっくり堪能できました。

(吉竹さん、どうもありがとうございました)

 

 

まず、奥方(女性)のために建てたため、建物の随所に施されているデザインが女性好みの柔らかなものでした。

例えば、お城の謁見の間などで権威を象徴する際には、松や虎など力強く豪華なものがモチーフとされるのに対し、成巽閣の襖・障子の腰板などに描かれていたのは、タンポポやすみれ、ちょうちょ、小鳥などの柔らかいイメージのものという具合です。

 

そして部屋の名前も、鮎の廊下、貝の廊下、亀の間、蝶の間などの名前がつけられており、建築主への温かな配慮をもって設計に取り組んだ、当時のデザイナーの粋な計らいを感じ取ることができました。

 

 

おそらく、今回の見学にあたってこういった説明を学芸員の吉竹さんがして下さらなかったら、建物の本当の価値や建築に携わった現場のみなさんの思い入れを、ここまで感じ取ることはできなかっただろうと思います。

(誤解のないように申し上げておくと、もちろん僕もプロの木造建築家ですから、どれだけ技巧を凝らして建物の造作がなされているのか?という技術的なことは読み取ることができます)

 

 

 

もしも説明を受けずに見学した場合、

「なんかすごく贅沢にお金をかけた建物だなぁ。つくった職人さんはきっと大変だっただろうなぁ。」

というレベルで見学を終えてしまったことでしょう。

 

 

つまり。

今回僕が何を言いたいか?というと、こういう(↓)ことです。

 

 

 

建物の価値というのは、使われている材料や、施されている細工の技術的な価値だけで決まるものではなく、そこに込めた製作者(建築主・施工者・設計者)の思い入れがとても大切だ、ということです。

 

一言で言うと、それは(建物の)コンセプトであり、(建物の)プログラムとも呼ばれるものです。

このコンセプト(またはプログラム)に基づいて設計がなされ、建物に課せられた目的に添ったデザイン、材料の選定などが行われていきます。

そして、建築主・施工者・設計者の3者が、まさに三位一体となって初めて、素晴らしいものができあがります。

 

僕はこれこそが建築の醍醐味だと思います。

一人だけの力でできることは、はっきり言ってたかが知れています。

やはりみんなで力を合わせて1つのものをつくり上げようと知恵を絞って考えて努力するからこそ、人の心を打つものができるのではないでしょうか。

 

 

 

あなたはどう思いますか?

もし何か感じることなどがありましたら、ぜひコメントを書いてみてください。

 

 

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