木曽平沢の漆-1 手黒目

先週末(6/12-13)は土日2日間かけて木曽に行っていました。
日本民家再生協会主催の建築専門家向け研修イベント/日本建築研鑽会・木曽講座に参加するためです。

西は下関、東は新潟県長岡など全国各地から建築に携わっている同協会の専門家が集まりました。

木曾ツアー


 


 


 


 




今回のテーマは、「漆と建築」でした。

木曽といえば、なんといっても漆器と木曽檜です。
今回の研修会では上記2点に的を絞って、

 ○ 木曽平沢で漆業を営んでおられる方々
 ○ 木曽檜の販売をされている方々

からお話を伺うことができました。



木曾手黒目


 


 


 


 




僕が今回の研修会で一番印象に残ったのは、木曽平沢で漆器を製作されている巣山定一さんのお話です。
上の写真は手黒目作業をされている巣山さん。



巣山さんは、漆を手黒目(てぐろめ)という方法で生漆(きうるし)をご自身で過去25年以上にわたって毎年精製されていらっしゃいます。

巣山さんによると、一般には漆の精製は機械で攪拌しながら温風を当てて水を飛ばすという方法でされていることがほとんどのようです。
このように手黒目にて漆の精製をされている方は大変少ないとのことでした。

手黒目作業では、数日前から好天の続いたような空気の乾燥した日を選んで、直射日光が当たる状態で、上記のように傾けた舟の中で漆を空気や紫外線にさらしてあげることで、生漆の中に含まれている水分を飛ばしていくのだそうです。

と、言葉で言ってしまうととても簡単そうですが、天候・気温・漆の状態・攪拌の手法や速度・どのタイミングで攪拌をやめるかなど、手黒目の技術を習得するのは何度も何度も積み重ねた経験を要するそうで、とても難しいとのこと。

しかし、手黒目によって精製された漆と機械精製の漆とでは、品質に明らかな差が出ることを、材料(=漆)と年月を経た製品を見せて丁寧に説明して下さり、とても納得できました。



この巣山さんにお目にかかって直接お話を伺えたことは、僕にとってとても得がたい経験となりました。

本当はもっともっとお話ししたいことがあるのですが、とても伝えきれないので、それはまたお会いした方だけにお話しするということで今回は筆をおきたいと思います。

巣山さん、本当にありがとうございました。

漆に興味のある方は、ぜひ巣山さんのホームページをご覧下さい。



木曾官材


 


 




 


2日目には、上松(あげまつ)町というところまで行って、木曾檜(官材という実生の天然檜)の原木市場と製品市場を見学させて頂きました。

僕は東風で3年前に担当させてもらった新築伝統構法の現場で木曾檜について教わる機会があったのですが、今回は木曾檜の流通経路についても教わることができて興味深かったです。

これも話が尽きないのですが、またお会いした時にお話しするということで。



明日は木曽平沢の漆-2として、金閣の漆と金箔について聞かせて頂いた内容をかいつまんで書くつもりです。

どうぞお楽しみに。



【謝辞】
今回の研修会は、日本民家再生協会会員である長野県在住の本城さん(有限会社 田空間工作所)のご尽力と、関係者のみなさまのご協力により実現したものです。
心より御礼申し上げます。

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